新ゴル語辞典 Vol.22 「慣性モーメント」

新ゴル語辞典

Vol.22
「慣性モーメント」

第22回目は「慣性モーメント」。今回のお題は、ゴルファーなら良く耳にするこのワード。知らないところでお世話になっている人も多いはず。


ILLUSTRATION by ゲーリー久永

『慣性モーメント』 (moment of inertia) とは、物質の回転運動のエネルギーに係わる概念。物質が回転を始める、もしくは、回転を止めるのに必要な力の量を示す値である。ゴルフ的には、クラブヘッドがシャフトを軸にして回転しやすいか、しにくいかという値である。つまり回転しにくいということは、ボールが当たっても動きにくいわけで、ミスヒットに強くなる。じゃあ大きければ大きいほどいいか?というわけでなく、「大きい=動きにくい」ということになり、操作性は悪くなる。では『慣性モーメント』とクラブの関係をわかりやすく説明しよう。

【その1 ヘッドの体積が大きいほど、大きくなり易い】
10年も昔の1Wを使っていると「そんな小さいヘッド使ってるの〜 」※1 と言われるのも、実は一理ある。近年のクラブは劇的にやさしくなっているのだ。

【その2 重量がヘッドの中心から遠くに配分されているほど大きくなる】
ヘッドの中心から近くに重量があるのが、アイアンでいうと「マッスルバック」、ウッドいうと「パーシモン」。操作性が良いが「ミスヒットに弱くなる」※2 というのも頷ける。

【その3 重心位置が深くなるほど、大きくなりやすい】
フェースより後ろが長いユーティリティや、ショートウッドがやさしいのは、ロングアイアンより、「重心の位置が深く」※3 なることが関係している。

 『慣性モーメント』が増えること=その他の安心要素も増えてやさしいクラブになるという、相関関係を持っているのだ。「慣性モーメント君」がいかに、ゴルファーの為に頑張ってくれているのかがわかると思う。とはいえ、度を超えたミスヒットや、スイング軌道の悪さの前では、『慣性モーメント』も無力である。頑張れ『慣性モーメント』というか、我々ゴルファーも彼の負担を減らすべく、もっとがんばろうではないか。

ゴル語キーワード

※1 そんな小さいヘッド使ってるの〜
2000年発売のヘッド体積の平均は314cc、2010年だと446ccと実に1.4倍、慣性モーメントもほぼ同じ比率1.38倍で増加している。それだけミスに強くなっている。一刻でも早くゴルフパートナーに行って、やさしいクラブを買うように!

※2ミスヒットに弱くなる
「哀愁のマッスルバッカー」がなぜ苦労するのかというのは、ヘッドの中心に重量が集中する為、ヘッドが操作しやすいからである。意識なく操作したことになると、当然ボールは曲がるわけである。しかし集中すると打感は良くなる。

※3重心の位置が深く
重心の深さのことを「重心深度」という。これが深くなればなるほど、インパクトの衝撃を受けてもヘッドが後方に押されづらくなることで、安定した球が打てる。

T島 Profile

東京の神田にあるゴルフスタジオ「アナライズ」に勤務。歴代のクラブ性能やスペックに詳しいシングルハンデの腕前。ゴルフの歴史や雑学に造詣が深く、独特の目線で書くウィットに飛んだコラムが評判のライター。