
すし石垣(本名:石垣聡志)/1974年生まれ、練習場で球拾いのバイトをしたことからゴルフを始める。プロ入り当初は本名の石垣聡志でプレーしていたが、アジアンツアーに参戦していた時に、「分かりやすいニックネームを」と、知人が提案した「すし」を採用。日本でも02年から登録名が「すし石垣」となった。
06年に初シードを獲得。07年の『ANAオープン』では首位タイで初の最終日最終組を経験。08年の『セガサミーカップ』では3打差の首位で最終日を迎え最終ホールまで優勝の可能性があったが、惜しくもJ・M・シンに敗れている。

派手なガッツポーズやすしダンス、ギャラリーを沸かせるパフォーマンスで人気を集めるプロゴルファー、すし石垣が昨年後半戦から試しているクラブがある。ゴルフパートナー「NEXGEN001 Sushi Limited」ドライバー。自身のこだわりと同社の開発顧問・櫻木博公氏の意図がミックスされた納得の仕上りだという。10年来彼のクラブを見続けている、ゴルフサービスショップ坂本(岡山県)を経営するクラフトマン坂本輝喜さんの下で、最終フィッティングを行なうという話を聞きつけ、訪れてみた。
昨年の日本オープンの公式練習日。会場である武蔵カントリークラブ・豊岡コースの練習場ですし石垣は黙々と球を打っていた。地元・埼玉県での開催。そして日本のメジャー。得意とするタフなコースセッティング。彼の後ろ姿から伝わってきた熱気は、そんな要素が重なってのことだったのかもしれない。
その日、彼の気持ちを高ぶらせているもうひとつの理由があった。所属するゴルフパートナーとの間で自分専用のドライバーを本格的に開発し、今日初めてそのドライバーが届くというのだ。到着を待ちわびながら、練習場で球を打っているところへ、念願のファーストサンプルが届けられた。
「実は僕が指定したヘッドの重さが間違っていて、とんでもないバランンスで出来上がってきたんです。D6ぐらい。それでもいい球がでたんですよ! 本当にビックリ!それじゃあ、ちゃんとした重さとバランスで出来上がったら結構いけるんじゃないかな!?というのがありました」
第一印象は肩透かしを食らったようだが、逆に期待感を持たせる内容だった。
基本的に彼はクラブを変えないタイプだという。「僕はクラブに対して、こういう感じじゃないと使えないとういうのがちゃんとあるから、自分のスタイルっていうか……、だからクラブはほとんど変えない。正直、試打とかもしないですね。しても使えないし、手に持ってすぐに無理! と感じてしまう。シャフト契約もFSPさんとさせていただいているんですけど、今使っているこのシャフトが出来上がるまで、7年くらいかかっているんで……。それができてから、日本でもやれるようになったかな」
彼の使用するクラブはゴルフパートナーで扱う商品の中から選ぶことができるという契約内容にはなっているが、実際にはそのまま使えるものは、なかなか見つからないという。そこで、今回の「すしモデル」の開発を進めたという経緯があった。
ドライバー開発に際して、すしは自らのこだわりをはっきり伝えていた。
「ここ最近主流の大型ヘッドは、僕が使っているシャフトをいれると、ぼやける感じがするんです。ヘッドが返ってこないというか。重心距離が長いのもあると思うですけど、そういう意味で、重心距離のことと、フェース厚を薄くしてもらうこと、ネックをつけてもらうこと。その他細かいことを伝えました」
ゴルフパートナーの開発顧問である櫻木博公さんがプロの細かい注文を汲み取り、そこに自分のエキスを注入して出来上がったのが、日本オープンでの1本だったのだ。重量調整を施し、ほぼ完成形となる2作目をプロに手渡したのはその2か月後。その日は、コースでのテストラウンドが組まれていた。
「今でも覚えています。12月10日。その日が、ちゃんとしたものとしては初対面でした。ゴルフ場でのテストラウンドで、そのコースは距離が短かったのもあって、ドライバーは4ホールくらいしか打てなかったんですけど、それが今まで自分が使っていたものよりも、はるかにいい球が出たんです。球筋もそうでしたけど打感も良くて。打感とかって指定するのは難しいじゃないですか! でも作ってもらう時に、僕はこういう感じが好きだって伝えたら、そういう感じで作ってきたんですよ、あの櫻木さんは! そういうのびっくりですよね!」
クラブに対して強いこだわりをもつ手強いプロを、開発者が納得させた瞬間である。7年がかりでつくり上げたシャフトに対しても、作り上げる中で彼の微妙なニュアンスがきちんと製品に反映されていったという。
「それぞれ、職人技なんですよね! あとは『すし職人』次第ってとこですかね!」
周囲を笑わせ、自らも相好を崩しながらも、信頼感と充実感が目の輝きから感じられた。
昨年、すし石垣は開幕戦を終えて、右ヒジの痛みを訴え、2戦目から6試合欠場している。シーズンを終え、獲得賞金は570万円弱。今シーズンは公傷制度が適用され、その6試合で昨年の賞金シード獲得額となる約1170万円までの600万円強がシード復帰への条件となる。
彼は今シーズンの思いを口にした。
「今年は全英オープンがセントアンドリュースなんですよね。ぼく行ったことがあるんですよ、あそこに。その時、ゴルフやめようと思って……」
2005年、セントアンドリュース開催の全英オープン・ローカル予選のため、渡英した時のことを、唐突に語り始めた。
「その時、全然ゴルフがダメで、予選でもボロボロになって……。
今までこれだけゴルフやったからいいや! イギリスまで来れたし。ゴルフをやめよう……と。それで、せっかくだから、セントアンドリュースを見て帰ろうと思って行ってみたら回れたんです。ちょうど一人キャンセルがでて、30分後に行けるよって。本当にラッキーでした。ラウンドしてみて思ったんですけど、プロになって初めてゴルフが楽しいと感じたんです。だからあそこには絶対行きたいんです!」
ラウンド後、「5年後にまたここで全英オープンやるから、その時に帰ってこいよ」とキャディたちに言われたという。「それじゃあ、その時までゴルフを続けよう。やめようと思っていた自分を引き止めてくれたんですよね」と。
「最近のゴルフってドライバーをパーンと飛ばして、アイアンもパーンと飛ばして。でも違うんですよね!イメージを出さなきゃいけなくて、これが“ゴルフ”というか。ショットとかじゃなくて、やっぱり、“ゴルフ”なんですよね。ゴルフの聖地がそれを教えてくれた気がします。曲がっても別に……、グリーン外しても別に……。みんなそうだと思うけど、大事なのはショートゲーム。でもショートゲームが上手くても、ノーチャンスのところに打ったら意味ないし。結局は、ゲームが良かったものが勝ちなんですよ!」そのためにも信頼できるドライバーが必要だった。思った所に球を操れたらゲームをしやすくなる。彼自身、重要視していないという飛距離だが、このドライバーに替えて、はっきりと数字も伸びているという。シードへ、全英へ。すし石垣は、新たな相棒とともに今シーズンを戦っていく。




