1週間のオープンウィークをはさんで再開された国内女子ツアー後半戦。初戦となった「ニッポンハムレディスクラシック」は、アン・ソンジュ(韓国)の貫禄勝ちに終わった。3日間、60台のスコアを並べ、最後は後続を寄せ付けずに日本ツアー26勝目をマーク。永久シードまであと4勝に迫った。初日から雨、風、寒さと難コンディションが続いた戦いのポイントはどこにあったのか。上田桃子らを指導する辻村明志コーチに聞いてみた。
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■ランなし、ぬれたラフ、カギは絶対フェアウェイキープ
大会前から断続的に強い雨が降り、コース内はぬかるんでいた。ランは出ずに、1番ホールなどは例年ドライバー、ショートアイアンで攻めていたのが、まさかのセカンドショットで3番ウッド、という選手もいたほどだ。曲げてラフにいけば洋芝でぬれた状況ではグリーンを狙えるはずもない。加えて風と寒さがコースを襲い、選手を苦しめた。そんな状況では、優勝したソンジュとともに、最終組で争ったテレサ・ルー(台湾)も含め、総合力の高い選手が上位に入った。
「今回はやはり、経験を積んできた選手、つまりベテランが上位にきました。難易度がそれほど高くないコースなら若手も上位に入りますが、今回は実力者が多かったですね。特にソンジュ選手は、今季3勝目。開幕戦で『今季はやる気がみなぎっている』と思っていましたが、充実感が見られます」と辻村氏。「今回はフェアウェイキープ率が大会1位。キャリーも出るドライバーが武器になったのは間違いありません」と、大会直前に替えたドライバーシャフトが奏功した。「後半になるにつれて慌てるそぶりがまったくなかった。最終組の中ではパッティングでも群を抜きました。勝って当たり前という感じでした」と、4度目の賞金女王も見えてくる内容だったようだ。
■ようやく浮上した川岸史果、ここにきての変化は後半戦楽しみ
そのソンジュをテレサとともに最後まで追ったのが、今季初の最終日最終組を回った川岸史果。昨年はルーキーイヤーながら大ブレーク。今季も女王候補にも入っていた大器が、開幕戦から苦しんだ。「川岸さんは開幕のときですが、ショットでインパクトが強く、振り抜きが悪くなっていたように見えました。それが、キレイに振り切れていたので、ようやく来たか、という感じですね」と、今季初のトップ3を射止めた。
「今回のコースは洋芝のベント。上から打ち込まないといけませんが、かといって、深くクラブヘッドが入るのは避けたい。上から入りつつ、薄く芝を取っていく技術が求められます。春先の川岸さんだったら難しかったかもしれませんが、それがこの成績ですから、やはりそこがうまくいって、うまく距離感も出ていたのでしょう。鈴木愛選手、成田美寿々選手、比嘉真美子選手ととともに、日本人期待の一角といっていいでしょう」と、辻村氏も大器の浮上を今大会のトピックに挙げた。
■初日トップ3の若手で唯一生き残った勝みなみ
「大会は3日間。実力が出ます。初日はしょせんただの初日なんです」と辻村氏。大会初日は単独トップに勝みなみ、2位に永井花奈、3位に新垣比菜が立ったが、2日目は3人ともにオーバーパーをたたき、沈んだ。それでも勝は最後にアンダーパーをマークし10位タイで終えた。「勝さんはもともと実績が違います。プロの中で、いわばプロとして3年間戦って、もまれてきました。特にパッティングは今大会パット数で1位。取りこぼしが少ないので、今年1勝はすると思います」と太鼓判を押す。
パワーと美スイングで注目の高かったジャンボ尾崎の弟子・原英莉花や、高弾道で攻める小祝さくらといった新人たちでも納得の成績を上げることができなかったが、その差はどこにあるのか。「もちろんすべてにおいて地力を上げていかないといけませんが、ゴルフで大事なのはクラブヘッドのボールへの入り方、打点、縦距離です。新人は、まだそこでブレがありますが、勝さんはそれがありません」と辻村氏も分析。“黄金世代”とはいわれるが、まだまだその中でも差はあるようだ。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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