<NOBUTA GROUP マスターズGCレディース 最終日◇21日◇マスターズゴルフ倶楽部・兵庫県(6,528ヤード・パー72)>
28回目の優勝会見は苦々しい顔から始まった。「だって“74”ですよ?本当にショックです」。逃げ切り勝利を挙げたアン・ソンジュ(韓国)は最終日に崩れて「74」となり、その勝ち方に納得がいっていないらしい。
カン・スーヨンのラストラウンドに私服で登場したイ・ボミ<大会フォトギャラリー>
やはり特にふがいないのは2ボギーに1ダブルボギーの前半。「昨夜は先週の最終ホールでミスしたことを思い出してあまり眠れなかった。食べるのが大好きなのに、食べ物が喉を通らなかった。そんな状態でスタートして4番のボギーはバンカーの目玉だから仕方ないにしても7番は力んでいた。あげく9番のダボはついてなくて…」。決して楽勝だと思っていたわけでは無いが、あまりに上手くいかず。リードはあったにも関わらず、今日は勝てないとすら思った。
切り替えられたのは10番に向かうハーフターン。「勝てないのであれば私の好きなゴルフをして、結果は神様に任せようと思った。安全にいけばいいと思っていたけど、それは自分のゴルフじゃ無く、どうやってやるか分からず上手くいかなかった」。前半ダメだったのは、持ち前の攻撃的なゴルフでは無く守りに入ってしまったこと。そう確信して自信を取り戻す。10番で残り151ヤードから3mにつけて最初のバーディを奪うと完全に復活。後半は2バーディを奪ってノーボギーと“アン・ソンジュ”らしいゴルフで9ホールを駆け抜けた。
ふがいない優勝。とはいえやっぱり涙は出た。特にグリーンで待ってくれていたキム・ハヌル(韓国)にハグされたときには、感極まった。「ハヌルが“泣かないでください”とか“泣きますか?”とか言うから…」。ハヌルも「トップでスタートして勝てないつらさを私も知っていますから“お疲れ様でした”と言いました」。気がつけば二人とも目頭を熱くしていた。
でも、やっぱり「74」での優勝には納得がいかない。「オーバーパーで優勝したのなんて、ほとんどです(2016年のダイキンオーキッドレディスに続き2度目)」。この結果、不動裕理の275試合を抜く226試合目という史上最速での生涯獲得賞金10億円を突破。これについても最初は「頑張ってきた結果なので自分を褒めたい」と言っていたが、「こんな結果では褒めたくも無い」とすぐに前言を撤回した。本当に腹が立っているようだ。
だけども落ち着いて考えれば、何度勝っても1つ勝つだけで大変だということを思い出す。「毎回優勝するのは大変だと思います。1勝するためには実力全てを出し切らないといけないですからね。今週は“人間がやることではない”と思うくらい大変でした(笑)」。1勝の重みを分かっているからこそ、「74」では納得がいかないのだ。
これで賞金ランキングでも2位の申ジエ(韓国)に約3500万円の差をつけて、賞金女王の座をグッと近づけたが、「女王もまだまだ分からない。こんな結果ではもっと頑張らないと。大きい試合も残っているので」と気を引き締める。1勝するための重みも、女王になるためのつらさも。両方分かっているからこそ、まだまだ不満なのだろう。言い換えれば、それが“強さ”なのである。(文・秋田義和)
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