<TOTOジャパンクラシック 最終日◇4日◇瀬田ゴルフコース 北コース・滋賀県(6,659ヤード・パー72)>
「始まる前から勝ちたいという気持ちが強かった。日本で優勝できて本当によかった」。日米共同大会を制して、2016年の野村敏京以来となる米ツアー複数回優勝を達成した畑岡奈紗は、そう口にした。
開幕前から意気込みが違った。先週試合が行われた台湾から月曜日に来日するとそのままコース入り。「台湾はグリーンの芝芽が強かったので、全く違うタイプの芝に速く慣れたかった」と入念にアプローチ、パターを調整。3日間開催で月曜日から練習を行うのは異例のこと。それだけ気合いが入っていた。
日本での優勝。その軸があるから想像と違う展開にもブレなかった。2位以下に3打差をつけてトップに立っていたミンジー・リー(オーストラリア)が前半7オーバーの大乱調というまさかの展開。「目標15アンダー」というゲームプランは変わったが、「ミンジーが落としていましたが、それを上回ればいいだけ」とシンプルに考えた。
最大のピンチにも冷静に対応した。前半伸ばしていたものの、11番、12番と連続ボギー。嫌な流れの中、13番でも2打目を左に曲げて残りは28ヤード。「さすがに3連続ボギーだと切り替えられない」という場面。このアプローチで畑岡は、通常のアプローチで使用する54度や58度のサンドウェッジではなく、PWを選択する。
「PWで転がして寄せる、というのが一番イメージが湧いたクラブでした。グリーンが受けていたので54度や58度だとピン手前にキャリーしないと寄らない。それなら自分に近いところに落として転がしていくほうがいいと思いました」
狙い通り2mに寄せると沈めてパーをセーブ。「今までならPWなんて想像できなかった。でもそういうのもできないと戦えないのが米ツアー。試合で決められて良かった」。アメリカに行って一番成長した部分がここぞという場面で発揮された。「ここが自分の試練なんだな、と思った。落ち着いてプレーできたと思います。このパーがあったから次のホールでバーディを獲れた」。息を吹き返すと、そこからはボギーを叩かず逃げ切りを決めた。
日本で頑張りたい理由はもう1つあった。「日本のファンの方々に、アメリカに行って成長した部分を見せたいという思いもありました」。母国の言葉で力をくれる人たちへ恩返しの意味もあった。その言葉を語らずとも、ファンには13番のアプローチをはじめ、18番のバーディなど一つひとつが胸に刻み込まれたに違いない。
今年は再来週の米ツアー最終戦「CMEグループ・ツアー選手権」で一区切り。出場権を持つ日本ツアー最終戦「LPGAツアーチャンピオンシップ」は「前の週がフロリダで疲れが溜まるなか、中途半端に出るよりは、来年も開幕が早いので(準備したい)」と欠場する予定。
それも来年こそ「メジャー優勝したい」という強い気持ちがあるから。「今年メジャーで勝つところに近いところまで行ったので、来年もそこを目標にやっていきたい。今年勝った2試合はともに3日間開催なので、4日間開催でも勝てるように体力をつけていきたいと思います」。来年はきっと、もっと大きくなって戻ってくるに違いない。(文・秋田義和)
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