年に1度、日本で行われる米ツアー公式戦「TOTOジャパンクラシック」。今年は2005年以来13年ぶりに瀬田ゴルフコース 北コースで行われた。アニカ・ソレンスタム(スウェーデン)が、03年大会で今なお日米両ツアーにおける54ホールの最多アンダーパー記録タイとして君臨するトータル24アンダーを出した舞台とあって、開幕前から会見では「24アンダー出せる?」「優勝スコアはどのくらい?」といったコースに関する質問も多く飛び交った。
【写真】大観衆が畑岡奈紗の勝利に沸いた
なぜなら、当時から距離が200ヤード伸びたとはいえ、コースレイアウトはアニカが5連覇を達成したときと同じ05年と同じ18ホールが使用されたからだ。
だが、この“当時と同じ”18ホールの並びが、ギャラリーを困惑させたのである。
瀬田ゴルフコースは東、西、北の計54ホール。その内、今大会が行われた北コースは通常営業の状態ではアウトインがセパレートされているものの、基本的には次のホールが隣接している。だが、今大会のセッティングでは本来の18ホールの並びではない流れで行われたため、ホール間をカートで移動するところも多くなってしまった。
例えば、1番のグリーンのプレーを終えた選手は、いきなり2番ティまでカート移動(通常営業の2番ホールは今大会の12番ホールとして使用。今大会の2番ホールは通常営業の8番ホール)。ギャラリーは徒歩での移動となるため、次のティショットを観戦するためには1番のプレーを見終えることなく早めに移動するか、走ることが求められる。
11番から12番の移動はさらに長い。ここも選手はカートで移動、徒歩のギャラリーは7番のグリーン横、前述の橋を通らなければならず、グリーンで別の組がプレー中であれば止まらなければならない。12番はパー3のため、そうこうしているうちに目当ての選手はどんどんと進行していく。
ましてや、クラブハウスから10番ティまでは徒歩にしてオーバー20分コース(選手は専用のバスで移動)。18番を逆走し、橋を渡って7番を逆走、さらに9番を逆走してようやくたどり着く。インスタートの選手を応援に来たギャラリーは、頑張ってその距離を歩くか、比較的近い(1番ホールの奥)12番ホールまで目当ての選手を待たないといけないのである。
以上を踏まえると、決して観戦しやすいコース、とはいえないだろう。
ギャラリーを整備する運営スタッフも苦労した。「通常の試合よりも難しさがありましたね。54ホールあるので色々広く使えるぶん、ギャラリーの方の移動幅も大きくなってしまう部分がありますから。また、選手がカートで移動する道の途中には橋があって、ギャラリーの方が歩く橋でもあるので危なくないようにスタッフも配備しました。また通常時よりも案内するためのスタッフの人数を増やしました」。(大会運営スタッフ)
ちなみに筆者も迷ってしまったが、通常時のアウトコースとインコースの間には今大会で使用していない東コースが存在しており、そこに迷い込まないようにする、また迷い込んだ人を探しに行くスタッフも求められた。
そこまでしても完璧だったとはいいがたいようで、「来年は案内専門のスタッフには、専用のウェアを着てもらい、案内専門のスタッフですとわかりやすくしようという案が反省会では出ました」と先述の運営スタッフは話している。
昨年まで行われていた太平洋クラブ美野里コースは、瀬田同様9ホールずつセパレートされているものの、選手がカートで移動する箇所は少なく非常に観やすい設計がなされていたように思う。その前に行われていた近鉄賢島カンツリークラブも同様だ。
こういったコースレイアウトに対して、米ツアーのコースセッティング担当者は「2005年と同じ周りかたにしました」とだけ解答している。
確かにアニカが出した24アンダーに対して、同じレイアウトで大記録に挑むということも大事だと思う。それが真意だったかどうかも分からない。ただ、今年も母国で意地を見せて優勝した畑岡奈紗をはじめ、米ツアー勢に立ち向かい2位に入った上田桃子、永峰咲希。世界の飛距離を見せてくれたアリヤ・ジュタヌガーン(タイ)ら見応え十分の戦いだったように、毎年この大会を楽しみにしているファンも少なくないだろう。だからこそ、ギャラリーに優しいコースレイアウトということも一考すべきではないだろうか。非常にいい大会だったからこそ、惜しさを感じた。(文・秋田義和)
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