今年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」は、ツアー屈指の飛ばし屋・額賀辰徳のツアー初優勝で幕を閉じた。本大会会場の太平洋クラブ御殿場コースは、世界の名門コースを手がけてきたリース・ジョーンズ氏を改修責任者に迎え、全面改修が行われた。本大会に2年ぶりに参戦した松山英樹も監修に加わり、2ホールがパー5からパー4になったり、バンカーが見直されたりと、よりハザードが効いた戦略性の求められる新コースとして生まれ変わった。JGTOのコースセッティング・アドバイザーを務める田島創志が、ツアーの深層を語る。
【写真】ジュニア2人とともに初優勝を喜ぶ額賀辰徳
■新装コースがピタリとはまった額賀辰徳
「改修されてフェアウェイが広がったところもありますが、一方で、ホールロケーションで狙う場所は狭くなったので、フェアウェイのポジショニングがより重要になりました」と田島は語る。加えて、今年はティショット地点にガードバンカーが新設されたりとハザードが効いているため、今まで漠然と“あの辺を超えればいい”と打てていたものが、よりフェアウェイの狙う場所を意識させる作りとなった。「ショット力が必要になる反面、狙う場所がはっきりしている」と語ったが、この新装コースが額賀にピタリとはまった。
本大会には6度目の参戦となるが、自身でも「いい印象はなかった」と口にしたとおり、昨年までで最高順位は2016年の43位タイ。これまで本大会で目立った成績を残すことはなかったが、コース改修が行われた今年は見事に攻略。その要因のひとつとして、「ドライバーを気持ちよく打てているからかもしれない」と語った額賀。
同会場は、これまでIP(ティショットの落下地点の設定距離)が250ヤードとなっていたが、改修を経て280ヤードに変更された。「ここは飛距離の出る選手がアドバンテージを持つコースだと思います。IPが280に変更されたことで、それがさらに生かされる形になったのも大きい。距離の出ない選手は、相当にキツくなったはずです」と、稀代の飛ばし屋にとっては好条件。300ヤード超えの飛距離に加え、3日間通してパーオン率72.22%と抜群のショットの精度も披露した。7262ヤード・パー70と距離が比較的長く、よりショットの精度が求められるコースで、持ち前のビッグドライブを武器に、グリーンを狙うショットでも強みを存分に発揮した。
■松山英樹はショットの不調でコース攻略ならず
一方、2011、16年と2度大会を制覇した松山が今年は苦戦。トータル4オーバー・46位タイで大会を終えた。フェアウェイキープ率50%(55位タイ)、パーオン率50%(59位タイ)とショットの不調が目立ったが、「僕が見ていて感じたのは、スイングで下半身の動きが調子がいいときよりも大きい気がしました。それでショットに微妙なずれが出てしまったのかと思います。一方で、アプローチなどのリカバリーは素晴らしかったと思います」。ショット力がないと勝てないコースで流れもうまくつかめず、スコアメイクができなかった松山。ショットの不調に加えて、より精度が求められるコースで苦戦を強いられる形となった。
■石川遼は2週連続予選落ち 3試合前と何がかわったのか
松山と同じく、2010、12年と2度本大会で優勝しているのが石川遼。初日に「75」、2日目に「73」とスコアを崩し、トータル8オーバーで先週の「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP」に続いて予選落ちとなった。3試合前の「ブリヂストンオープン」では4位タイに入った石川だが、その変化はどこにあったのか。
要因のひとつとして、田島は試合によってのコースの違いを挙げる。ショット力がより問われるコースと、どちらかというとリカバリー力が問われるコースとに分かれるが、先週、今週は、どちらかというとショートゲームよりもショットの精度がより重要となるセッティング。「ティショット、セカンドショットでポジショニングができないと、狙えなくなってしまう。改修されて刻めるコースではなくなったので、余計ドライバーで打ちたくなるし、ターゲットを定めたくなる。そういったもので練習場ではうまく打てるのに、試合になるとそれが発揮できない。ドライバーをうまくコントロールできなかったのが、直接スコアに結びついたのだと思います」。石川自身もドライバーへの深い悩みを打ち明け、コースを去った。“世界水準”を目指してより戦略性の高いコースに生まれ変わったが、ショットの精度によって明暗が大きく分かれた3日間となった。
解説・田島創志(たじま・そうし)/1976年9月25日生まれ。ツアー通算1勝。2000年にプロ転向し、03年『久光製薬KBCオーガスタ』で初日から首位を守り、完全優勝。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)体制では、トーナメント管理委員会 コースセッティング・アドバイザーを務める
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