年々クラブ契約をフリーにする選手が増えている国内女子ツアー。2018年には賞金女王のアン・ソンジュ(韓国)をはじめ賞金ランキングトップ5のうち3人が契約フリーという状態に。19年も大山志保、笠りつ子ら実力者たちがフリーとなり、様々なメーカーのクラブが入った14本で戦っている。
女子プロの今年のセッティングが丸わかり【フォトギャラリー】
多種多様なクラブを選べるのは我々アマチュアも同じこと。つまり彼女たちのセッティングを見ることで、アマチュアが選ぶべきクラブが見えてくるのではないか。ということで契約フリーの選手の14本を徹底調査した。今回はささきしょうこのセッティングを紐解く。
【ささきしょうこ2019年開幕2戦目のセッティング】
1W:PRGR RS ドライバー 9.5度
(フジクラ スピーダーEVOLUTION V 661/S/45.5インチ)
3W:PRGR RS フェアウェイウッド 15度
5W:クレイジー CRZ-F5 18度
4U:クレイジー CRZ-U24 24度
5U:クレイジー CRZ-U24 24度
6I〜PW:スリクソン Z565
W:クリーブランド RTX-4 48度
W:クリーブランド RTX-4 52度
W:クリーブランド RTX-4 56度
PT:オデッセイ オー・ワークス ブラック 3T
BALL:スリクソン Z-STAR
ささきは15年のプロテストに合格すると16年にツアーデビュー。同年の「大東建託・いい部屋ネットレディス」で初優勝を果たした。その時はメーカーとクラブ契約を結んでプレーしていたが、17年の序盤にクラブ契約フリーに転向。18年には「スタンレーレディス」、「樋口久子 三菱電機レディス」と2勝を挙げた。クラブに対して非常にこだわり、感覚が強いことでも知られている。
そんなささきの19年のセッティングを、プロコーチ&クラブフィッターの筒康博氏はこう見ている。
彼女にとってのクラブの課題は、今までのスイングでしっかり飛距離が出ること。プロギア『RS』のドライバーと3番ウッドには、藤倉コンポジット「Speeder EVOLUTION V」が装着されています。FW&UTは、カスタムシャフト『CRAZY』の飛び性能が気に入った流れで使っているんじゃないかと想像します。手元のコンロールがしっかりしていて、インパクトゾーンで先端部が加速する仕事をするシャフトが好みのようですね。
このセッティングで興味深いのが、ダンロップ『SRIXON Z585』アイアン。前作に比べ、大幅に飛距離性能がアップしたこのアイアンは、見た目がカッコ良いのに高く上がって飛距離が出る名器アイアンなんです。しかも、V字型のソールはライだけでなく色々なタイプのインパクト傾向にも非常に寛容。マイルドな弾き感と気持ち良い振り抜けが癖になったのかも知れません。
飛び系アイアンを使う際にマストアイアテムになるのが、多ロフトのウェッジです。ささき選手の場合も48度からセッティングしている優等生的なロフトピッチになっています。つまり、彼女のセッティングは自分のニーズに合わせた「お手本」の一つといっても良いでしょう。一方で、自分にあったシャフトが見つかっている、契約フリー選手の特徴も併せ持っています。
お店で皆さんがクラブを選ぶ基準や優先順位は様々。彼女から学んで欲しいポイントは、「クラブに何をやってもらうのか?」を持っていて欲しいということです。プロゴルファーでさえ、ショットの全てを自分のスイングで行わないですし、かといって全てをクラブのせいにもしません。「飛んで曲がらない」クラブやスイングは、実は役割分担や分業された上で成り立っていると考えて欲しいです。
ささき選手の場合は先ほども言いましたが、『“今までのスイング”でしっかり飛距離が出る事』。飛び系アイアンを使っているのもそう言った理由でしょう。アン・ソンジュさんのセッティング解説のときにも言いましたが、「ある程度は人間がやるべき。ある程度以上はクラブがやるべき」ということです。「こういう球を打ちたい」というのが明確にあって、その中で自分のできる以上のことはクラブのスペックに託す。それが大事です。
この機会にもう一度自分のクラブを見てみてください。どういうときに何をしてもらいたいのか。「右にいかないようにして欲しい」でもいいですし、「つかまって欲しい」でもいい。新しいクラブを買う時にも飛距離性能がうたい文句のクラブも多いですが、本当に求めているのは飛びだけなのか。きっとプラスアルファがあるはずです。それを加味した上でクラブを選ぶと、いいクラブと出会えると思います。
一般ゴルファーの皆さんの場合は、セカンドショット以降のゲーム運びがスコアに直結するはず。でも一方で、気持ち良くドライバーショットが打てていて良い場所から2打目が打てるならグリーン周りでピンチになるリスクを回避しやすくなります。昔から言われている「ドライバーイズショー」、つまり、いくら真っ直ぐ飛ばしたってスコアメイクには関係ないとも言えなくなりつつあります。プロ達にとっても、遠くに真っ直ぐ飛ばせるクラブはピンチを回避しチャンスを作る重要な役割があるのです。
解説・筒康博(つつ・やすひろ)/プロコーチ・フィッター・クラフトマンとして8万人以上のアドバイス経験を生かし、現在は最先端ギア研究所『PCMラボ』総合コーチ、インドアゴルフレンジKzヘッドティーチャーを務める。ALBA本誌ギア総研をはじめ様々なメディアでも活躍している。
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