<全米女子オープン 3日目◇1日◇CCオブ・チャールストン(米国サウスカロライナ州)◇6515ヤード・パー71>
2日間守った首位の座を明け渡したとはいえ、1打差の3位タイ。海外女子メジャー制覇に向けひた走るのは、日本の比嘉真美子だ。昨年は大相撲の勢(いきおい)関との婚約を発表。賞金ランキングも自己最高の4位で終え、今季も地元・沖縄の開幕戦で勝利を果たした。実質1年目の2013年に2勝を挙げて以来の快進撃が続いている。
比嘉真美子のライバルは? 全米女子OP3日目のハイライト【動画】
今では国内ツアー屈指の実力者。賞金ランキングも6位と順調に見える現在だが、数年前はどん底でもがき苦しんでいた。13年はルーキー年ながら賞金ランキング8位。14年も開幕戦で2位に入りながら、5月以降は低迷。シードこそ獲得したが、賞金ランキングは45位に下降した。
15年はさらに落ち込むことになった。開幕当初からどうにも調子が上がらない。それどころか、ティショット、とりわけドライバーに不安を抱え、上位どころか予選通過も厳しくなり、5月下旬からはなんと17試合連続予選落ちのどん底に落ちた。
「日本女子アマ」を2連覇。プロ入り後も順風満帆の生活を送るはずだった比嘉。抜群のショット力と攻撃性はいつしか消え、下位であえぐ姿を毎週見ることになった。そんな戦いが続く中、予選落ち7戦が続いたあとの7月に話を聞いたことを思い出した。
当時の言葉を見返してみた。「今の私が本当の私。これを受け止めることから始める」。過去の栄光を捨てきれないアスリートもいる中、比嘉は違った。「こういう状態になって、今までどれだけの人に支えてもらっていたのかがわかった。こんな風になっても私を支えてくださる人がたくさんいるので、必ず戻りたい。ひとりでここまで来たわけではない」。不調から脱することができない選手に聞くのは酷な質問を浴びせかけても、丁寧に答えてくれたのを覚えている。
その年はシード落ち。QTに臨んだが、絶不調のドライバーを抜いて戦った。翌年の出場権を獲得するのが至上命題。これをなんとかクリアするも、やはり調子が上がらない16年シーズンがやってきた。9月までに25試合中15試合で予選落ち。シード復帰など遠い状況から一気に、復活ののろしをあげたのが夏も終わりかけた頃だった。
9月中旬に4位タイに入ると、2度の予選落ちを挟んで再び4位。そしてその後も成績が出始め自身最終戦で2位。シード復帰を一気に決めた。17年は8月に復活優勝。昨年も1勝を挙げてキャリアハイの約1億1000万円を稼ぎ、確実にカムバックを果たし、ここにきて「全米女子オープン」での優勝争い。予選落ちが17試合続いたあのときの比嘉の姿はもう、どこにもない。
16年9月に復活を予感させた4位のあとでも、「まだまだです。本当に復活といえる日が来たらそういいます」と話していた。3シーズンつづけての勝利に、昨年の「全英リコー女子オープン」での4位タイ、そして本大会と、そろそろ本格復帰とみてよさそうだ。
「目の前の一打に集中するだけです」と決して大きな目標を口にしない。もがき苦しみ、周囲への感謝を忘れずに地道に努力し、粘りで再びはい上がってきたからこそ、一打の重みが痛いほどわかる。かつてエリートと呼ばれた知られざる苦労人。完全復活の集大成が、この全米であることを願ってやまない。(文・高桑均)
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