「ニッポンハムレディスクラシック」でS.ランクン(タイ)が優勝したことで、タイゴルフ界の奥深さが改めて感じられた。
アリヤ&モリヤのジュタヌガーン姉妹がロレックス(女子世界)ランキングトップ50にそろって入っている女子のタイ勢。韓国勢、米国勢の二強に、アリヤのいるタイ、畑岡奈紗のいる日本、豪州、カナダ、スペイン、ニュージーランドなどが絡む…、というのがランキングから国単位で見た現在の実力だ。
ランクンのキレイなドローはこのスイングから生まれる【連続写真】
東京五輪まで約1年。自国開催でメダル獲得に血まなこになる日本選手団の中で、リオ大会に続いて競技のあるゴルフは、果たしてその胸算用に入っているのだろうか。
大会約1カ月前にならなければ出場選手が決まらない個人戦とあって、予想は極めて難しい。特に女子は畑岡以外、誰が出場するかわからない大混戦状態とあって、出場選手の予測すらつかない。
五輪に向けての思惑も漂う今年のツアーは、黄金世代が本領を発揮し、中堅も踏ん張るという面白い展開になっているのだが、そんな中で初優勝したのがランクンだ。
リゾートとして知られるプーケット島生まれの19歳。今回の優勝まではあまり知られた存在ではなかったが、実は、しっかりとした実績の持ち主だ。15歳だった2015年にプロに転向すると、翌16年はタイLPGAツアーで賞金女王を獲得。17、18年と2年連続で中国LPGAツアーの賞金女王を経て、満を持して日本に乗り込んできている。
穏やかにほほ笑む日頃の姿からはそんな風には見えないが、将来の米ツアー挑戦もにらんでの日本参戦。タイの選手ではごく当たり前だが、流ちょうに英語を話す上、頭の回転もすごく速い。内面は極めてシャープな選手なことが、話してみるとよくわかる。
タイの選手の強さのヒミツを尋ねると「アリヤとモリヤだけではなくて、みんなお互いに助け合い、高め合うことができる。それにお互いにスマイルならケンカにならないでハッピーになれるでしょう」と、笑顔でさらりとかわしたが、ポジティブシンキングの極み、と言い換えることもできる。
もちろん、まだまだランクンのランキングはタイエイの中で5番目と五輪出場には及ばない。だが、その優勝が、タイのゴルファーたちの層の厚さを示したのもまた事実。
男子でも、アジアや欧州、日本ツアーで実力を示す選手が多く、こちらも五輪の台風の目になりそうな気配のあるタイ勢。日本勢がメダルを獲得するためには、男女ともにこの面々を上回る成績を出す必要がある。
男子は松山英樹、女子なら畑岡の出場が濃厚で、それぞれもう1人が激戦となる見込みの五輪日本代表。大一番の舞台に立ってからも、強豪との戦いが待っている。ランクン優勝でタイ勢の底力が改めて感じられた。(文・小川淳子)
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