<全英オープン 2日目◇19日◇ロイヤルポートラッシュGC(北アイルランド)◇7344ヤード・パー71>
北アイルランドの地で、アイルランドのシェーン・ローリーが躍動した。後半の終盤こそ勢いは止まりスコアを落としたものの、最初の10ホールで6つのバーディを奪った貯金を生かし、決勝ラウンドを首位タイで迎えることに成功。最終日にクラレット・ジャグと対面する瞬間を意識しても恥じることのない、十分なパフォーマンスを見せた。
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この日、午後スタート組に入ったローリー。好天に恵まれた早い時間帯にスタートした選手が好スコアを出し、前日を4アンダーの好位置で終えた自身を追い抜いていく姿を目の当たりにした。しかし、ひとたびコースに飛び出したアイルランドの雄は、おりから放たれた猛獣よろしく、一気にスコアを伸ばしてライバルたちを逆転していった。
序盤は1番から3連続バーディで波に乗ると、5番でもスコアを1つ上げる猛チャージでトータル8アンダー。前方をひた走るJ.B.ホームズ(米国)をあっさりと捉える。8番でさらにバーディを奪い、10番ではモンスター級のロングパットを沈めて今大会初の2桁アンダーに乗せ、ホームズに2打差をつける。
しかし11番以降は、アウトで見せた圧巻のゴルフが鳴りを潜めてパーセーブに終始。14番でスコアを1つ落とすと、最終10番でも2.5メートルのパーパットを外してしまう。それでも2ラウンド連続の「67」で8アンダー。土曜日は同じく首位に並ぶホームズと最終組でティオフする。
ラウンド後の記者会見で「優勝の二文字がちらつくのではない?」と聞かれたローリーは、「そうやって聞かれると考え始めてしまうものだ」と笑い、こう続けた。
「もちろん今晩考えるだろう。いい位置につけているのは間違いないんだから。だがまだ2ラウンド残っていて、前に立ちはだかるのは世界のトップゴルファーばかりだ」
満足感ととともに、残り2日間へ気を引き締めた。
「私がやらなければならないのはただ1つ。今は好調で、きょうも67で回った。明日も自分にとってのベストスコアを出せるように最善を尽くさなければならない。そしてそれが結果として、最終日にもつながることを願うばかりだ」
2014年の9位タイを最後に予選通過ができていないローリー。昨年のカーヌスティ大会では「苦しんだ」。
「9年間苦楽をともにしたキャディと別れて、色々な面で落ち込んでいた。ゴルフも低調で、精神的にも不安定だった。だがいまはまるで違う。プロゴルファーのキャリアは長く、私自身10年間プロとしてやってきた。ジェットコースターみたいなものだ。だが精神的に落ち着いて、気持ちが落ちたときにどのように対処すべきかもわかったんだ。いい時も悪い時も受け入れるようにしなくてはならないことがね」
この精神状態が、最近好調なローリーの強みとなっているのは間違いない。
「もし優勝できなかったとしても、日曜日に優勝争いができたとしたら、それだけでも十分だ。まずは明日コースに出て、いい数字を出したい。だがもしそれがかなわなかったとしても、それで世界が終わるわけではない。いまの心境はそんな感じだよ」
さらに今大会は、準ホームともいえる北アイルランドのロイヤルポートラッシュでの開催。多くのギャラリーがローリーを後押ししている。
「これほど大音量のギャラリーの前でプレーしたことは、おそらくないと思う。1番ホールから信じられないほど素晴らしかった」
大声援に乗せられるようにショットを重ね、バーディを奪っていった。
「10番でロングパットを沈めたときには、言葉が見当たらないが、ただただ信じられなかった。最高のフィーリングだから、大観衆から逃げないでプレーするのみ。グリーン、ティで拍手をもらえてとてもうれしい。だから私としてはただ単に、応援してくれる人のために最善を尽くすのみだ」
“人事を尽くして天命を待つ”このスタンスは、まるですべてを悟った男のようだ。最終日の夕方。すべて決着がついたとき、勝利の女神がほほ笑みかけているのは、この32歳かもしれない。
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