<日本女子オープンゴルフ選手権 3日目◇5日◇COCOPA RESORT CLUB 白山ヴィレッジゴルフコース QUEENコース(三重県)◇6479ヤード・パー72>
夕闇迫る練習場。大会3日目を首位タイで終えた畑岡奈紗が、感触を確かめるように丁寧に練習を行っていた。ショットの感じが良くなっているとはいえ、完全に満足とはいかないなか、大会3度目の勝利に向けて黙々と準備をした。
この二人、レベルが違いすぎ【写真】
ショット力とパッティングでスコアを稼いできた。米ツアー3勝は日本人として最速。その成長はとどまることを知らず、世界ランキングも現在6位につける。来季の海外女子メジャー制覇を見据え、自分磨きには余念などあるはずもない。
飛距離も大きな武器の畑岡だが、次のステップへと進むため、練習にも工夫をこらしている。この日は、スタート時間が遅く、ホールアウト後の練習場には畑岡ひとり。ショット練習を行い、ウェッジでの仕上げに入ったところで、タッグを組むキャディのグレッグ・ジョンストン氏が打席から前方へと歩き出した。
止まったのは畑岡から50ヤード先。そこで帽子を脱いで手に取り、畑岡に向かって手を振った。これを確認した畑岡は、ウェッジでハーフショット。一発目からジョンストン氏めがけて放たれたショットは帽子の中に見事に収まった。畑岡の練習を見守っていた100人ほどのギャラリーは、目の前で行われた妙技に拍手喝采。ところが畑岡はすぐに2球目を放った。
「照れくさいじゃないですか(笑)」。はにかみながら答えてくれた。「今年からですね。パー5の3打目とか、そういう距離は大事になってきますので」と、次々とジョンストン氏の帽子にボールが収まっていく。距離を10ヤード刻みで80ヤードまで伸ばしながら何度となくキャップインを繰り返し、キャディに向かって親指を立てた。妙技練習終了。「楽しみながらできるので」と、ショット練習の締めは、帰路につく前のギャラリーの目を楽しませるものでもあった。
「練習場に人がいないときにしかできないので、毎回できるわけではないですが、ゲーム感覚で楽しいです」と、今年から取り入れた練習を畑岡自身も気に入っている。ターゲットの場所にヘッドカバーを置いてやる場合もあるが、キャディが正確な場所を教えてくれるこの練習のほうが「わかりやすいし、効果的だと思います」と、今後も継続していく。
「きょうはボクもプレッシャーがあった。ちゃんとキャッチしないとと思ってね(笑)。これはアニカ・ソレンスタムのキャディから教えてもらって、ナサと話して始めてみたんだ。アニカもやっていて、距離感が良くなったということだったから。でも、あんなに人がいると思わなかった(笑)」。二人が行った夕暮れの特練は、ウェッジの精度アップに加え、最後の最後にギャラリーの目をも楽しませるものだった。(文・高桑均)
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