台風19号の影響により27ホールの短期決戦となった「スタンレーレディス」は、黄アルム(韓国)の優勝で幕を閉じた。2日目の競技が中止、最終日が9ホールの競技。そして最終日は女子ツアー史上初となる無観客試合となるなど、近年でも異例の試合となった。
男子ではテレビ塔が傾いたが、事前に中止を決定しており事故はなかった【写真】
国内女子ツアーの競技成立は27ホール。プレーできる時間が限られるなかで、なんとしても成立をさせたい大会実行委員(主催者、日本女子プロゴルフ協会らで構成)は対策を練りに練ったことだろう。試合の開幕前から幾度となく会議を行い、何かが決まるごとにメディアに発表した。
大会実行委員会が発表した内容は、以下の順序の通り。
・10日(木)18時30分
12日(土)の全日と13日(日)の午前中のギャラリー入場を不可とすることを発表。合わせて11日(金)の17時までに12日の競技の有無を発表するとした
・11日(金)スタート前
初日の60位タイまでで予選カットとすることを選手に告知
・11日(金)11時50分
12日(土)の開催を中止とすることを発表。13日の開催についてはその後の様子を見て決めると説明
・11日(金)17時00分
13日(日)のギャラリー入場を終日不可とすることを発表
・12日(土)17時45分
13日(日)の競技を10番ホールからスタートする9ホールのラウンドに変更、27ホールの短縮競技とすることを発表
この発表を聞いていて、限られた条件下でなんとか試合を成立させたい思いは伝わってきた。屋内の東京ドームで行われるプロ野球のクライマックスシリーズもすでに中止が発表され、人々の足となるJR東日本の運休がすでに発表されていた10日の時点で、12日の競技中止を決められなかったのは少し遅い気もするが、ベストは尽くしたように思う。
ただ、それはあくまで“限られた”条件下でのものだ。3日間しかないなかで競技を成立させるのは、獲得賞金額によって来年の出場権が決まる女子ゴルフにとってはとても大事なことだと思う。現実的な側面に目を向ければ、賞金をもらえなければ全選手がただ働き。それは避けるべきであるのは間違いない。
だが、それならばもっと競技を成立させるための選択肢を増やすべきだろう。今回は13日にコースに問題がなく、天候も回復したことで27ホールを行うことができた。もちろん天気予報を加味した上での13日に残りの競技を行うという決断だっただろうが、もし台風の影響でコースが使用できなかったり、荒天が続いていたら…、そのまま中止となっていただろう。天候のせいだから仕方ないといえばそれまでだが、是が非でも成立させたいのであれば運頼みはできるだけ避けるべきだ。
まずは主催者、コース、選手、そしてテレビ中継の都合など様々な条件を乗り越えて、全試合が翌月曜日などに予備日を設定する必要があるのではないか。現在予備日が設定されている大会は公式戦4試合と「アース・モンダミンカップ」、「資生堂 アネッサ レディス」の6試合のみ。ほとんどの大会で設けられていないのが実情だが、逆にいえば設けようと思えば設けられるという裏返しでもある。実際に1997年の「日本女子オープン」では月曜日にプレーが行われている。
様々な事情があって予備日をつくれないことは理解できる。それができないのであれば、何か別の方法をもっと模索して欲しい。たとえば2日目が中止となるならば、初日のスタート時間をできる限り早めて18ホール以上のホールをプレーすることも可能だったはずだ。前例はないかもしれないが、規定上の問題はない。
もしくはいっそ別の日程を組んで行うか。プロ野球は雨天中止となれば別の日に試合が設けられる。基本はつながった日だが、場合によってはだいぶ先の日取りで行われることもある。わざわざ一試合のために遠征することも場合によっては起こりうる。
ここまで聞いて、空き週のない女子ツアーでは無理。そんなことをするくらいなら、中止でいいというのは簡単だ。もちろんこれらが妙案だとは思わない。選手、ギャラリー、関係者の安全を考えればどうやったって中止にするのがベストなときもある。大事なのはできる限り運任せにしないように、はじめから無理と諦めず様々な角度から考えて数多くの選択肢をつくること。もちろん数多の議論を重ねて様々な選択肢が出たとは思うが、取材をしていてまだまだ足りないように感じた。
女子ツアー規定の第40条【競技コンセプト・セカンドカット】の1番上には、『競技委員会は、各競技の実施要項で定められたホール数終了のために尽力するものとする』とある。この場合の定められたホール数というのは3日間大会であれば54ホールだ。
54ホールできなければ、45ホールの競技を目指す。それも無理だった場合に36、27と減らしていくいうことだ。そう考えれば土曜日の時点で日曜日を9ホールの競技としたのは早計だったのではないか。LPGAによれば「12日にコースが完全閉鎖だったため、コースの状況が分からなかった。コースの修復を考えれば9ホールなら確実に競技を成立することができると判断した」とのことだが、日曜日の天候、そしてコースの状況であれば18ホールできたと思う。結果論かも知れないが、18ホールを予定して9ホールにすることができるわけだから、もう少し粘っても良かった。
尽力していないというつもりはないが、その前の段階でもっともっとできることがあるはずだ。今回のイレギュラーだった件を「競技が成立して良かったね」で終わらせることなく、「どうにか54ホール、せめて36ホールにできなかったのか。“ギャラリーに見てもらえる状況”で、27ホールを行うことができなかったのか」という議論を重ねて欲しい。主催者も協会も選手もギャラリーも、全員がもっと良くなる道が出てくるかもしれないからだ。(文・秋田義和)
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