<伊藤園レディス 事前情報◇14日◇グレートアイランド倶楽部(千葉県)◇6741ヤード・パー72>
「またここに戻ってきました。今でも鮮明に思い出します。18番で大泣きしたことも思い出しました(笑)」。昨年の「LPGA新人戦 加賀電子カップ」で優勝争いに加わりながら上がり2ホールで連続ボギーを叩き、一生に一度のタイトルを逃した河本結はグレートアイランド倶楽部に戻ってきて、そう笑った。
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河本が号泣した理由は、17番パー3のティショット。197ヤードのホールで、4番のユーティリティをチョイスした。しかし「グリーンの右に乗ると思った」という当たりは、なぜかそのままグリーン奥にダイレクトに消えた。けっして計算ミスではない。この時、手に握られていたのは、4番ではなく3番のユーティリティだったのである。
悪い流れのまま18番もボギーを叩いて万事休す。「いい勝負だったのに。やってはいけないミスをしてしまいました……。最後の最後で……。スイングミスなら理解できる。でも、あの場面で(クラブミスを)やってしまったのが、本当に悔しい……」。グレートアイランドに涙声が響いた。
あれから約1年。レギュラーツアーで初優勝を挙げ、来季の米ツアーの出場権も獲得した。「その時から成長していると思っています。自分の成長した姿を見たいですね。17番に忘れてきたものを取り返す、という気持ちもあります」と同じ舞台での戦いにワクワクする一方で、忘れていた気持ちを同時に思い出した。
「あれだけ泣いたということは、それだけ必死にやっていたということ。最近その気持ちを忘れかけていました」
河本といえば感情表現豊かなプレーヤー。悔しいときには文字通り全身で表現するタイプである。だが、秋口に入ったころから淡々とした振る舞いが続いていた。「悪い意味で大人になっていたというか……綺麗にゴルフをしようとしすぎていましたね」。ツアーに慣れてきたことで生まれたマンネリ。涙を見せることへ向けられる視線。笑顔でプレーした方がいいのではないかという葛藤。それらは、ときには号泣するほどの熱い気持ちを奪っていった。
「泣かないようにしようとすると、自然とゴルフもパーを並べるセーフティなものになっていった」。闘争心が薄れたことは、持ち味の攻撃的なゴルフを失ったも同義。前半戦を終えて『平均バーディー数(3.8039)』、『バーディー数(194)』と攻撃性を示すスタッツで1位を“独占”していたが、気がつけばそれぞれ4位と5位と“らしさ”が損なわれていたことは明確だった。
そんな失いかけていた気持ちを、くしくも去年一番悔しい思いをした舞台で思い出したのだ。「昔のことを思い出して、どれだけ必死にやっていたか再確認することができました。アメリカで戦っていく上で“自分”というのは絶対に見失ってはいけない。残り3試合は良くも悪くも言い訳がきかない。本当に死ぬ気でやれたらいいと思います。良かったときの気持ちを呼び起こして、必死に優勝を獲りに行きたい」。闘争心むき出しの生粋のファイターの心に、もう一度大きな炎が燃え上がった。
新人戦で敗れ、涙を拭いながら「(ミスは)何かのメッセージだと思う」と話してから1年。その時に発した自分からのメッセージは、確かに今の河本に響いている。(文・秋田義和)
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