<LPGA QTファイナルステージ 2日目◇5日◇こだまゴルフクラブ (埼玉県)◇6472ヤード・パー72>
2日目を迎えた来季の前半戦出場権をかけた戦い。その会場で、これまでには味わったことのない緊張感のなかでプレーしている選手がいる。それが藤田さいきだ。ツアー通算5勝。2010年にはメジャーも制している百戦錬磨の実力者だが、「69」で回り15位タイまで順位を上げた第2ラウンドにようやくホッと一安心。「ずっと緊張していて…1日ぶりにお腹が空きました」と、その安堵感を表現した。
ベテランたちも一喜一憂 QTの模様をフォトギャラリーで
藤田にとって、これがプロ転向後では初のQT。もともとQTを経て単年登録でツアーに参戦したが、「プロミスレディス」でツアー初優勝を挙げ、その権利で正会員になった2006年以降は、主にシード選手として、ここを受験せずにツアーを戦い続けた。久々の空気を吸い、「不思議な雰囲気ですね」という感想を抱いた。
今季終盤になり佐伯三貴、諸見里しのぶら、長年ともに戦った選手たちによる、“ツアー撤退表明”が続いた。先月34歳になった藤田は、これについて「あまりに(撤退宣言が)続いたので『やめる!』って言えなくなったー(笑)」と最初茶化していたが、「ギリギリまでQTを受けるかは悩んでいました。ファーストステージからだったら、(回避も)考えていましたね」という気持ちがあったことも明かす。今季賞金ランクが60位だったため、非シード選手でかつ同71位以下の選手などが受けるファーストステージは免除され、今ここに立っている。
その気持ちを揺さぶったのは、「みんなレベルが高い。一緒に回ると『うまいな〜』と思います」という最近の若手の台頭も大きい。「あのアグレッシブさはすごい。私たちは経験が邪魔をして、一つひとつのプレーをものすごく考えてしまう。でも若い選手は、ずっとピンを狙ってくる」。そう感心しながらプレーを続けるなかで、「私たちがシードを獲るのは難しいこと」という思いも抱くようにもなった。
だが、今回のQTでは逆に、その“経験”に助けられている。初日は「73」だったが、2日目は1イーグル・5バーディ・4ボギーと3つ伸ばした。緊張もあって「特に昨日は体が動かず、手打ちになってしまった」というが、「手打ちになった時に、どれくらい曲がるとかは分かる」と、今の自分の状態を考慮したプレーでスコアを作り上げた。「長くゴルフをやっていてよかった」。このサバイバルの場では、そう思えた。
前日から今朝にかけて、「何食べても味がしない(笑)」と食事もうまくノドを通らない状態だったが、この日の18ホールを終え、冒頭の言葉にあるようにようやく“空腹感”を感じられるようになった。その緊張が、少しほぐれたことを意味している。「(QT受験は)ゴルフを見つめなすいい機会になった。これまで“なあなあ”だった部分を、引き締めることができそうですね」。今夜はしっかり食事を摂ってパワーを充電させた藤田が、残る2日間も“老獪”なプレーを続け来季前半戦出場権をつかみとりにいく。(文・間宮輝憲)
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