現地時間の13日(金)、米国男子ツアーが4月第1週までの試合を中止すると発表。競技が進行していた「ザ・プレーヤーズ選手権」も初日で打ち切られ、その後まもなくゴルフの祭典「マスターズ」も延期が発表された。
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世界的な広がりを見せる新型コロナウイルスの感染拡大の影響だが、先行きの見通しは一切立っていない。世界中で中止・延期となっているスポーツイベント。米国でも野球、バスケットボール、サッカー、アイスホッケーなど、プロリーグが軒並み無期限の中断や延期を強いられる中、ゴルフ界も多大な影響を受けている。
世界でもっとも有名なトーナメントと言っても過言ではないマスターズの延期は大きく報じられた。つい2週前には「予定通り開催する」と発表したばかり。プレーヤーズ選手権の取材をしていたフロリダからオーガスタまでは車で4時間半。急きょ、カメラマンが現地に赴いた。
大会への準備期間で忙しくなるはずだったオーガスタナショナルGCとそオーガスタの町並み。到着した岩本芳弘カメラマンは「一夜明けた14日は、それほど変わった様子はなかった」と話す。
オーガスタの人口は20万人をやや下回る。それが大会期間中には2倍に膨れ上がるとされている。待ちは華やかなムードに包まれ、世界中がこの町に注目する。4月9日の開幕を前に、昨年からスタートした「オーガスタナショナル女子アマ」も含めれば、オーガスタの町は2週間、ゴルフ一色。そんな光景が今年は消えてしまうことになるのか。
岩本カメラマンが現地の様子を綴った。
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13日の延期発表を受けて、14日の朝、ジョージア州のオーガスタへと進んだ。車の旅。ドナルド・トランプ米大統領の国家非常事態宣言を受ける中、不安もまじる複雑な思いで向かった。
「マスターズ延期の発表から一夜明けた3月14日、マグノリア・レーンへの入り口はいつものように硬く閉ざされていた。中ではカートに乗った人や玄関を出入りする人影、そしてマグノリア・レーンを通って出入りするワゴン車を見ることができた。マグノリア・レーン左サイドのパトロンの出入り口も硬く閉ざされ監視カメラが目につく。1台の車が出てきた。通信会社の AT&Tの車であった。延期になったことで一時的な機材の撤収でもあったのだろうか? コース外周を車でひと回りするが変わりなく全ての門は閉ざされたまま。まあ当たり前ではあるが…」
オーガスタナショナルGCは世界でも有数の閉鎖的なコースだ。セレブがそろうコースメンバーになることは夢物語。そこでプレーすることなどは想像もできない。ぶらりと訪れ、レストランで軽食をとれるようなカントリークラブとはワケが違うのは承知の上だ。
コースのメインエントランスはワシントン・ロードからマグノリア・レーンと呼ばれる通路を経て、クラブハウスへと続く。あと3週間もすれば、グリーンジャケットを身にまとったセレブメンバーや、パトロンと呼ばれるギャラリー、報道陣、関係者、そしてチケットを求める人々が集結するはずだった。
「外周を回っているとオーガスタ大学のサマービル・キャンパスがあった。中をのぞくと男性はタキシード、女性はドレス姿でたくさんの人が記念写真を撮影していた。気になって声をかけてみると、今日はプロム(プロムナードという学年末にあるダンスパーティー)の日。パーティーの前に記念撮影をしているという。国家非常事態宣言が出たのにダンスパーティーか…。コロナウイルスのことを聞くと『私たちは大丈夫よ』とのこと。こちらの学生にとってプロムは一大イベントのようなものなので、まあ仕方ないのかな」
大会開催前の町並みはいつも、こんなものなのか。通常通り平穏な様子を見せているオーガスタの町でホテルを探し、チェックインした。
「ホテルについてチェックインする時にパスポートを見せると『日本から?』と少し警戒するような雰囲気。逆にこちらから『マスターズが延期になったけどキャンセルで大変?』と聞いてみると、『4〜5カ月先にはやるだろうから大丈夫だよ』と、それほど気にしていない様子。『毎年、日本から来てくれる友達がいるんだよ』と関係者の名前を言ったかと思うと『Mr.アオキも来るよ』と。どうやら警戒されていたワケではないらしい…。まだまだ深刻な感じは見られず、笑顔が印象的だった」
マスターズがオーガスタの町にもたらす経済効果は100億円を超えると言われている。この町はどうなっていくのか。
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