国内女子ツアーの今季開幕戦となる「アース・モンダミンカップ」は、23日(火)から本戦に出場する選手が会場入りし調整を行っている。久しぶりの試合への雰囲気も高まるなか、25日(木)の初日を前に主催のアース製薬・大塚達也会長と、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の小林浩美会長がリモート会見に出席。開催決定までの経緯やコロナ対策などについて、それぞれの考えを明かした。以下、ポイントごとにまとめていく。
■大会開催にあたり
本来の開幕戦から3カ月以上遅れで迎える今季初戦を目前に控え、大塚会長は「この大会を迎えることができたのは、うれしく感無量」とよろこびの声を発した。
1年前から開催への準備を進めるなか発生した今回のコロナ禍。当然、主催者としては「感染状況や政府の方針次第では中止もあると思っていた」という覚悟もしたが、緊急事態宣言が解除されたことなどを受け開催に踏み切った。「特別なことをしたわけではなく、社会的な課題に一つひとつ対応していって、今に至りました。ただ苦労して準備してきたことのすべてが無になるのでは、というメンタル的な負担はありました」と、ここ数カ月の心情を振り返った。
■選手ら関係者全員へのPCR検査について
練習日初日になった23日には、会場で選手、キャディ、関係者らへのPCR検査を実施。これは「主催者なので(費用は)負担すべきものととらえている」とアース製薬の主導で実現した。「何よりも全員にPCR検査が可能になったのがありがたい」と大塚会長。事前に感染状況が把握できることが、一つの安心材料となる。
また大塚会長は検査導入のためかかった費用について、「(無観客試合のため)ギャラリースタンドもなく、バイトやボランティアもいない。プロアマも前夜祭もないので、PCR検査の分を負担しても、トータルの経費としてはかなりの減額。経済的には逆に楽になった」とその内実について明かした。
今後の大会での検査実施については、小林会長は「柔軟に対応。来月も試合がないので、その後の全国の感染状況も分からない。検査内容や費用についても柔軟にいきたい。(アース・モンダミンカップが今後の)モデルになるとは考えていない」と、“継続”に関して明確な答えは出なかった。
■新型コロナ感染者が出た場合
先週行われた米国男子ツアー「RBCヘリテージ」では、事前検査では全選手が陰性判定だったものの、大会途中でニック・ワトニー(米国)の新型コロナ感染が発覚した。
同様のケースは当然今回も考えられ、規定にはその場合“中止を検討する”ことも明記されている。これについて小林会長は「行動記録、検温も実施しており、アドバイザー、保健所との協力体制も万全。すぐ判断できると思う」と説明。米ツアーでは、ワトニーが途中棄権し、そのまま大会を続行したが、今大会で起きた場合についても「そういう進め方もある」とうなずいた。
また144名とツアー最多の出場人数を誇る大会は、例年通りの規模を維持したが、これについて大塚会長は、「万が一発症した場合はクラスターを作らない、感染を広げないことが求められる。事前にコントロールするようにすれば、人数が多くても、きっちり責任を果たしていけると考えている」とその考えを示した。
■海外選手が出場できないことについて
新型コロナ感染拡大防止策として、現在政府は海外からの渡航に関して制限をしている。その影響をうけ、母国で過ごす昨年覇者の申ジエや、15、16年優勝のイ・ボミら海外シード選手のなかには今大会に出場できないケースが出てしまった。
これについては大塚会長も、「国の政策なので、どうこう言えない。海外選手も参加して盛り上げて欲しかったと今も思う。打つ手がなかった」と胸を痛めている。
ツアー最高額の賞金2億4000万円(優勝4320万円)がかけられる大会は、“公認競技”として賞金加算対象試合となる。これについて小林会長は、「公認する=賞金加算が条件で、加算しないという選択肢はない。ただ今後は状況を把握し、見極めが必要になってくる」と協会の意向について話した。
■インターネット中継について
今年の大会は無観客で4日間開催されるが、インターネット中継を使用し、リアルタイムでファンへ熱戦の様子を配信する。
テレビ局が放送しないことで、いまだくすぶっているとみられる放映権問題の影響についての質問も出たが、これについて大塚会長は、「インターネットを使えば視聴者が見たい映像を選べるし、選択肢も増えるのでこの方法を選択した。配信をしないという考えもあったが、ギャラリーも会場に入ることができないし、誰も見ることができないのは忍びない。なので放映権(問題)が大前提にあったわけではない。ただ放映権でJLPGAが潤沢になって、それが選手に使われるのは大賛成」と私見も織り交ぜながら、動画配信に踏み切った背景を説明した。
■今後、開催を予定している大会で課題になりそうな点
今回の「アース・モンダミンカップ」は、主催者の強い意志と後ろ盾もあり実現した。前述したPCR検査の実施や会場での感染対策はもちろんだが、今大会では本来ボランティアを募って行う業務を、アース製薬の社員が務めるなど、あらゆる面でこれまでにない方法での準備が進められた。
今後開催する大会も、これまでとは違う形の事前準備が必要になってきそうだが、その際の課題はどういった点にあるのか? 大塚会長は「元々、私たちは社員を中心に運営するという考えがあった。今回は社内だけで対応できたが、そういう主催者は多くないと思う。またボランティアを入れて感染が起きた場合などの責任の取り方、管理は心配になる」と、マンパワーの問題や、感染リスク、感染後の対応に関することを挙げた。
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