昨年の渋野日向子に続き、「AIG女子オープン」のメジャーでツアー初優勝を飾ったソフィア・ポポフ(ドイツ)。同大会では並みいるトップ選手が苦戦を強いられる強風の中、ロイヤルトゥルーンの超難関リンクスで見事なプレーを披露、ゴルフ界を大いににぎわせた。
しかしポポフの主戦場は米下部のシメトラツアー、つまり米LPGAツアーのメンバーではない。そのお陰でメジャー制覇を果たしても、LPGAツアーメンバーが獲得できる5年のツアー出場権は得られず、ノンメンバーとして2年、2021年の終わりまでの資格を得るに留まった。
これにゴルフ界の男子プロも大きく疑問を投げかけた。特に欧州勢が反応した。イアン・ポールター(イングランド)は
「ゴルフ界にとって最も素晴らしい勝利が、数日後には最悪の出来事になった。LPGAツアーの対応は恥ずべきこと。ゴルフ界にとっても恥ずかしいことだ」とツイートした。
トミー・フリートウッド(イングランド)も「僕たちゴルファーはみなメジャー制覇を夢見ている。ソフィア・ポポフの達成は素晴らしいことだ。なのにLPGAツアーのルールはばかげている」とこちらもツイートした。
これらの反応に対してLPGAツアーコミッショナーのマイク・ワン氏がビデオメッセージを発表。シーズン途中にルールは変更しないことを明確にした。
「我々のツアー規定はシーズン始めに決まっている。そのままでシーズン終わりを迎える」とした。
実際に同様のことは過去にも起きている。昨年の渋野日向子がまさにそのケース。さかのぼれば15年に「全米女子オープン」に勝ったチョン・インジ(韓国)、14年に「エビアン・チャンピオンシップ」を制したキム・ヒョージュ(韓国)もその勝利したシーズンと翌年の2年の出場資格を得ただけだった。
さらに今季はもっと特別だ。新型コロナウイルス感染拡大でツアースケジュールが大幅に変更。もともと4月上旬に開催される予定だったメジャーの「ANAインスピレーション」は9月開催。しかしながらその出場資格はすでに決定済みでポポフは出場することはできない。
ところがこれは男子の「マスターズ」も同様で、4月に確定した資格で11月に開催される。
「私の意見に賛成できなくても仕方ない。気に入らなくても仕方ない。すでに出場資格は決まっている。それをあとから変えることはない」とワン会長。が今回こうして議題に上がったことで今後、変革が行われる可能性はある。
昨年の渋野をはじめアジア勢では起こらなかったのに、ポポフの勝利で論争になるのは良いこと。“メジャーチャンピオン”にノンメンバーもメンバーもないような気がするのだが、今後の対応に注目。(文・武川玲子=米国在住)
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