1990年後半から20年以上にわたり、ゴルフ界を牽引してきたのがタイガー・ウッズ。少年時代に目の当たりにしたウッズ世代がゴルフ界に続々と入ってきたわけだが、さらに下の世代が台頭してきた。
ウッズが1997年のマスターズで12打差をつける圧勝を決めたとき、ほんの幼子か、もしくは生まれていなかったかもしれないニューゼネレーション。それがコリン・モリカワ(23歳)でありビクター・ホブラン(22歳)、マシュー・ウルフ(21歳)だ。
2019年の春まで、3人は世界トップアマだった。大学時代からスター選手として活躍し、プロとしての輝かしいキャリアを予感させた。
2019年にプロ転向。3人全員が推薦出場で結果を残してツアーカード手に入れたが、同様の前例はない。
「大学生のとき、一緒に勝つことを夢見ていた。1年以内に3人が勝てたら、それは本当に奇跡のように素晴らしいことだ」と当時のホブランは語っていたが、本当に実現してしまうのだから豊かな才能に恐れ入る。
モリカワとウルフは19年に初優勝を挙げ、ホブランも20年に優勝。ゴルフファンが関心を強めた矢先、大きく飛び抜けたのはモリカワだった。
今年8月の「全米プロ」で、メジャー2戦目にして優勝。最終日の「64」は、ここ25年の優勝者で最少スコアだった。
「ボクたちは以前からできると信じていた。ウルフ、ビクター、ジャスティン・スーの4人で集まったとき、いい道のりを歩んでいると話したのを覚えている。ジャスティンは少しつらい思いをしているが、その思いを忘れたことはない」
22歳のモリカワが初優勝を挙げたとき、世界ランクは1039位だった。その彼が今ではメジャーを含む3勝、世界ランク5位(9月6日現在)にまで上り詰めている。ホブラン、ウルフもそれぞれ同ランク31位、36位につけている。とにかく驚異的なスピードなのだ。
となればゴルフ界も大きな期待を寄せてしまうが、全米オープン2勝、世界ゴルフ殿堂入りのカーティス・ストレンジは警鐘を鳴らす。
「早い段階から彼らを祭り上げるべきではない。今後をどう戦っていくかを見守ろう」
と、モリカワのメジャー制覇の前に語っていた。
ストレンジは、容易に“最高”の称号をつけることを好まない。ツアーでのキャリアはマラソンであって、短距離走ではないというのが持論だ。長年にわたって活躍することが目標であり、数日、数週間単位で判断を下すものではないと信じる。
新たな才能を軽視しているわけではない。ストレンジは彼らのスイングやプレースタイルをたたえ、成功を期待する一方で、次のように続けた。
「数年前、別の“最高の”ルーキーがいなかったかい?」
ジャスティン・トーマス、パトリック・ロジャース、ダニエル・バーガーという、2014-15年シーズンのデビュー組だ。トーマスはメジャーを含む13勝を挙げている一方で、バーガーは3勝、ロジャースは未勝利にとどまっている。デビュー初期の結果だけでなく、いかにそれを維持していくかが重要だと強調する。
話題に上がったトーマス自身は、「モリカワたち3人がどれほど才能に恵まれているか、われわれも分かっている。長い間ツアーで戦っていくだろう」と大人のエールを送った。トーマスがいうように、新たな才能に拍手を送ろう。ただ、安易に“最高”と口にするのは早すぎる。“最高”の冠をつけるのは少し先の話だ(文・ジム・マッケイブ)
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