<マスターズ 事前情報◇9日◇オーガスタナショナルGC(米国ジージア州)◇7475ヤード・パー72>
秋の「マスターズ」はなんともタイムリーなアナウンスから始まった。9日(月)、オーガスタナショナルGCのフレッド・リドリー会長は2021年4月のマスターズにリー・エルダー氏を名誉スターターに迎えることを発表した。
エルダー氏は1975年、黒人として初めてマスターズに出場。以降81年まで6度の出場を果たした伝説のプレーヤーだ。
米国で“分断”の社会と叫ばれ、“ブラック・ライヴズ・マター”と改めて人種差別問題が大きく浮上している現在、エルダー氏を改めてマスターズに迎える意味はとても大きい。
現在86歳のエルダー氏は、10人兄弟の一人として生まれた。10歳の時に両親を亡くし、キャディの仕事をしたのがゴルフとの出会い。プロゴルファーとなったが当時のツアーには“白人オンリー”というルールがあり黒人ツアーでプレーした。ようやくPGAツアーに参戦できたのは67年。74年にツアー勝利を挙げて75年に初のマスターズ招待を得た。
ところが当初はオーガスタに黒人選手が来るとクラブ周辺は厳戒態勢が敷かれたが、結果は何事も起こらず、「予想外にも」温かく歓迎されたという。
「マグノリアレーンを初めて通ったとき体が震えた」とエルダー氏。この日はオーガスタナショナルGCを訪れリドリー氏のアナウンスを聞き入った。もうひとつ、エルダー氏の名前でパインカレッジ、伝統的に黒人が通う大学にスカラシップ(奨学金制度)も創設された。
リドリー氏から電話でそのことを知らされたのはわずか10日前。初めてオーガスタナショナルGCの門をくぐってから45年が過ぎていた。
このニュースを知ったタイガー・ウッズ(米国)は「こんなに素晴らしいニュースはない」と喜びを語った。
来年4月、ジャック・ニクラス(米国)、ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)とともに1番ティに立つ。エルダー氏は2週間ほど前に、自宅のあるカリフォルニア州サンディエゴのゴルフコースで滑り、ヒザを痛め、この日は杖を使ってコースを歩いた。
「来年の4月8日、ティショットを打つ準備は整っている」。エルダー氏の雄姿は、再び歴史的な瞬間になる。(文・武川玲子=米国在住)
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