新型コロナウイルス感染拡大の影響により開幕戦から中止が相次ぎ、20-21年の統合シーズンとなった国内女子ツアー。イレギュラーなスケジュールのなかで、歴代最高クラスと呼ばれた昨年のプロテストを勝ち上がったルーキーたちの戦い方はどうだったのか。一区切りのついたこのタイミングで、中間通信簿として、昨年まで同じ選手としてプレー、今年から解説者として彼女たちのプレーを見守ってきた大江香織が5段階で採点する。
安田祐香の貴重!な私服グラビア【フォトギャラリー】
今回は安田祐香。昨年のファイナルQTで2位に入り今季の資格をつかんだ安田は、開幕から予選落ちもありながらも順調に上位に顔を出したが、9月に頸椎(けいつい)捻挫を患い3試合欠場、1試合棄権した。その後、戦線に復帰、4試合に出場して2020年の戦いを終えた。そんな1年を大江はどのように評価するのか。
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成績・・・★★★★☆
安田さんの今年の成績を振り返るときにどうしても目に入ってしまうのが、ケガでの4試合欠場ですよね。ただし、それ以外を見れば調子がいいときは、予選もしっかり通っていますし、スコアもしっかり伸ばせています。自分のゴルフがかみ合えば、またすぐに優勝争いするんじゃないかなと思いますね。期待しちゃうからこそ、さらにもう一歩の成績が欲しくなってしまいますが、まだ1年目。私のルーキーのときを考えれば雲泥の差です。彼女には周りの期待も特に大きいから、大変なところもありました。そのあたりを含めても頑張った1年だったと思います。
だからこそ、安田さんには来年もたくさんのことを経験して欲しいです。例えばケガとの付き合い方。身も蓋もない言い方になってしまいますが、大きく分ければケガを多くする人はしちゃうし、しない人はしないもの。私はすごくトレーニングで気を遣ったとか、ケアをものすごく丹念にやったというわけではなかったですが、あまりケガをしないタイプでした。
だからこそ、安田さんの場合はうまく無理をしないで、休むときは休むといったメリハリをつけていくのが一番いいと思います。こういうのは、「ちょっとやりすぎだな」など、ツアーをやっていくうちに分かっていく部分です。自分に合うやりかたを色々試しながら見つけてほしい。安田さんはアマチュア時代からたくさんの試合に出ていましたが、ここまでの連戦はなかったと思います。そういったコントロールが身に付いてくれば、1年しっかりと戦えると思いますよ。
爆発力・・・★★★★☆
一方で今年の彼女を見ていて感じるのは爆発力の高さ。調子が良いときに一気にスコアを伸ばしていける力が抜けていると思います。
これはメンタルが強いからだと思います。安田さんは、最終ホールでスコアを伸ばして予選通過だったりと、何かがかかった局面でバーディを獲ることが少なくないですよね。こういったのを獲れる人と獲れない人の違いは、自分のゴルフに自信があるかないか。安田さんは最後の最後でも、思い切ってやれる選手。逃げずに攻めて行ける気持ちの強さを感じますね。だからこそ、獲るべきところで獲れるし、行けると思ったらアクセルを踏んでいけるのです。もちろん、これももっと磨いていけば手が付けられないくらいになると思います。そんな期待を込めて「4」にしました。
スイング、ゴルフの完成度・・・★★★★★
スイングも申し分ない、出来上がったものだと思います。とてもバランスがいい。テークバックでオープンフェース気味にクラブを上げていくことで、しっかり体も回転できるし止まらない。フォロースルーでも左のほうへ振り抜ける。だから、プレッシャーのかかった場面でも変わらず同じスイングができる。
爆発力、スイングを含めて、安田さんには完成度の高さをとても感じます。ショットだけでなく、パッティングのストロークもいい。全てにおいてスキがないというか、弱点がありません。完成度の高さは技術だけではありません。ルーキーとは思えない、冷静さもあります。大人っぽいというか。まだ20歳だけど落ち着いている感じがすごくしますね。それがゴルフにも出ています。ゴルフが完成されつつあると思います。
理解力・・・★★★★★
そして自分のゴルフをちゃんと分かっていると思います。だから、一緒に回る賞金ランキング上位の選手とかを見て、「自分もああしたほうがいいのかな」、「取り入れたらもっとうまくなるのかな」ということにあまりとらわれていないように見えます。取り入れることはもちろん、いいのですが、それで自分のゴルフを崩したりすることもある。だけど、安田さんの場合は自分のゴルフへの理解度が高いから、その心配がない。本当にあとは1年間ツアーで戦うという経験だけだと思います。調子がかみ合って、何度か優勝争いできる位置が続いたらポンと勝てると思いますよ。
大江香織(おおえ・かおり)/1990年4月5日生まれ、山形県出身。通算3勝。153cmと小柄ながら体全体を大きく使ったスイングで8年連続シードを保持するなど、息の長い選手として活躍。2019年にツアー撤退を表明、「ツアーを撤退するプロに“大江が生きているから撤退しても大丈夫”と思ってもらえるように、色々活動できたら」と2020年からは新たなかたちでゴルフに携わっている。
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