10月12日から開催された国内メジャー「日本オープン」から3試合連続で予選落ちを喫している石川遼。特にドライバーショットが安定せず、結果が出せない状態が続いている。石川のスイングが一体どのような状況なのか、国内ツアー10勝、石川と同じく米ツアーにも挑戦した経験がある田中秀道に語ってもらった。
日本オープンと「マイナビABCチャンピオンシップ」で石川のスイングを見たという田中。感じたことはドライバーショットで「ダウンスイングで腰が直線的に動いているように見えました。クラブがダウンスイングで降りてくると同時に、腰が少し横にスライドしてしまうので、インパクトが間に合わずに右に出ているように感じました」。
また、「ダウンスイングからインパクトまでのイメージが強すぎると思います。こう降ろしてきて、こう当てなきゃと、そこに意識を置きすぎている感じですね。打つ前にいろいろな動きをして、実際にその動きをしていますが、打つときはスピードが出る。いくら動きのイメージをしても、打つ時にはスピードが出るので、上半身と下半身のバランスやタイミングが機能しないと球は曲がってしまいます」。“打つ前”から過度にイメージを置きすぎているのも、スイングが改善しない一因だと田中は考えている。
田中自身にも経験があるというが、米ツアーに行くと知らず知らずのうちに“振ってしまう”ようになるという。「毎日何十ヤードも置いていかれることもあるでしょう。そういう選手たちの横でやっていくうちに、知らないうちにヘッドスピードを上げてしまう。そこまで振ってもしょうがない、距離ではかなうわけないのにと思っていても、気づけば振りちぎってる自分がいるんですよ。米国だと。そうなると自分のスピードコントロールがどういう状況だか分からなくなってくる。今の石川選手はそういう状況だと思うんですよ。頭の中では把握しているつもり。でも、それ以上に自分の体がいこうとしてしまう。それを止められない自分がいるんです」。田中はこれを“PGA病”と呼んでいる。頭と体に無意識のズレが生じ、自分のスイングスピードのコントロールを失ってしまう。それもスイングを乱す大きな要因だという。
だが、その“病”に気がつき克服できれば、石川の力ならば修正は難しくないと田中は考えている。なぜなら田中は石川の高い技術を評価しているからだ。「リカバリーショットを打つとき、“ここに打ち出さなきゃいけない”というイメージを作ります。枝に当てないように、とか。その目標に向かうとき、石川選手はイメージすればそこに打っていける技術を、コースでは随所に見せているのです。彼の頭の中は自分のスイングのことでいっぱいでしょうが、目標を強く意識することで、ナチュラルな身体の回転だったり、自然なクラブの動きを取り戻すことができるようになるでしょう。そして、頭の中にコースの映像が出てくるようになれば、いきなり今週優勝ということになってもボクは驚きません」。意識を自分ではなく、いかに目標に向けるか。そこが石川の復調のカギになるという。
「もっと簡単に考えて気楽に打てばいいとも思いますが、彼は15歳の時に優勝しスター街道を歩いてきた人間。ボクには分からない様々なことがあると思う。彼は今、もう一段階段を上ろうとしている途中。彼の場合はそれを一個飛ばしでいかなければいけない、すごく高いところを考えなければいけないので、本当に大変だろうなとは思います。ボクは彼がアメリカで戦ううちに、石川遼じゃなくなってきているというか、すごく良い部分があるのに短所を消すことばかり考えてしまったのではないかと思ってます。ボクは“いやアナタもっとすごいんだよ”って声を大にして言いたい」。また、田中は「本人にも先週会った時に伝えてはいるんですけどね。もっと“石川遼として勝負してみたら”って」と伝えたという。
若くしてスターとなった石川。周囲からの期待は常に高く、成績に関係なく注目が集まるのは現在の国内ツアーでは石川ぐらいのものだろう。精神的にも辛い状態が続くだろうが、残りの国内男子ツアーで結果を出し活路を見出せるか。
●田中秀道(たなか・ひでみち)1971年3月29日、広島県出身。91年にプロテスト合格。95年にフィリップモリスでツアー初優勝。02年から米ツアーにも参戦した。ツアー通算10勝。
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