昨年、新型コロナウイルスの影響で延期となった日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテストが、いよいよ3月の第1次予選からスタートする。今年は2020年度、21年度ぶんと2度開催の予定になっているツアーへの“登竜門”。これを目前に控えた受験者たちは、どのような心境で本番を待っているのか? 今回は2度目の受験となるプラチナ世代の後藤未有に話を聞いた。
普段のラウンドでは考えないようなことが、ふと頭に浮かんでくる。それが初めて経験したプロテストの“魔力”だった。
「前回は、考え過ぎながらゴルフをしていました。『これを外したら落ちるんじゃないか』とか、『周りが伸ばしてるんじゃないか』とか。ほんと独特の雰囲気がありましたね。今の考え方ができていれば通っていたのかな、とも思うんですけど」
その時の結果はトータル2オーバーの22位タイと、無情にも合格ラインに1打届かなかった。「一打がすごくシビアな状況になる。だからこそ目の前のプレーに集中しないといけなかったんですけどね。技術的には大きく変わらないと思う。メンタル勝負ですかね」。ナショナルチーム(日本代表)にも名を連ねたトップアマでも、揺れる心を抑えることができない独特の緊張感がコースには流れている。
しかし、この結果が翌年につながったのは不幸中の幸いでもあった。というのも一昨年からJLPGAの規定変更により、原則、年末に行われるQT(翌年の出場権をかけた予選会)は協会の正会員しか受けられなくなった。賞金シードなどの権利がない選手にとっては、ここに参加できないということはすなわちツアーの出場権を失うことを意味する。
だがこの年のプロテストでは、不合格でも合格ラインから2打差以内に入った選手には、QT挑戦権が与えられた。後藤はその権利を生かし、無事ファーストステージを突破。ファイナル行きを決め、最終的にQTランキング64位で20年シーズン(後に21年シーズンと統合)の出場権を手にした。一気に数を減らした“TP単年登録者”として、プロ1年目のシーズンを戦うことができた。
そのデビューイヤーは、「1番楽しみにしていたギャラリーの前でのプレーもできませんでしたし、結果をみても思っていたものとは違いました」と、そこまでに描いてきたものとは少し異なるものではあった。それでも5試合に出場したレギュラーツアーでは、「NEC軽井沢72ゴルフ」で優勝争いに加わり、最終日最終組の1人としてプレー。下部のステップ・アップ・ツアーでも6試合を戦うなど、経験値はしっかり積み上げることはできた。しかし、ここでも「考え過ぎながらゴルフをしていました」という反省点は残る。
「結果がついてくるときは、余計なことは考えずに目の前の一打に集中できている。何も考えないのは難しいですけど、集中しないといけませんよね」。これが一昨年の悔しい経験、そしてプロ1年目を過ごして気づいたことの一つだ。冒頭の“今の考え方があれば”という言葉が、まさしくこれ。無意識に自らに与えていたプレッシャーを解き、無心で戦うことをこれからは“心がける”。
ステップ・アップ・ツアーを主戦場に、出場できるレギュラーの試合で結果を残すという立場は今年も変わらない。新成人となった後藤の今年の目標は「レギュラーツアー優勝」と「プロテスト合格」。前者を早いうちに達成すればもちろんテストは免除となるが、現時点では合格への準備も怠るわけにはいかない。
昨年はテスト延期という事態にも直面したが、「(延期発表の時期が)スイング迷走中だったので、正直よかったと思いました。自分のスイングが分からなくなっていて、アドバイスをもらってもどうしたらいいのか分からない状態が続いていました。もう少し練習できるって、内心ホッとしました」と、決して悪いことばかりではなかった。「今は特に悩みはありません」。万全の状態でスタートを切ることができそうだ。
単年登録選手はプロテスト1次、2次が免除され、6月22日から茨城県の静ヒルズCCで行われる最終から出られるのも大きい。「これまでは試合中に『今なんでミスをしたんだろう?』とか考えすぎることが多かったのですが、そこは切り替えが大事だなと思ってます。プレー中に試行錯誤しない。一打終わったら次の一打。反省はラウンド後にすればいい」。精神的に一回り大きくなった20歳が、関門突破のリベンジへ集中力を研ぎ澄ます。
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