最近の米ツアーでショートテンパーはと聞かれたら、ゴルフファンの間ではタイレル・ハットンの名前が挙がるだろう。
昨年の「アーノルド・パーマー招待」で米ツアー初優勝。欧州ツアーでは同年に「BMW PGA選手権」、「アブダビHSBC選手権」を制しており、今や世界ランクを5位(2月14日時点)まで上げた。トップ選手の地位を確立したイギリス出身の29歳は、ツアーの“変わり者”として知られている。
ハットンの態度やマナーについての話題は尽きないが、特にソーシャルメディアを騒がせたのは優勝したアーノルド・パーマー招待の最中だった。
9番ホールでアプローチが大きく右にそれた後、キャディのマイク・ドナフィにぼやいた。「あれよりヒドいショットを見たことがあるか?」。答えないキャディに対して、ハットンは「答えろよ」と詰める。折れたキャディが「いいや…、見たことない」と返すと、ハットンは大声で「さっきのは最低だ」とキレたのだった。
追い打ちをかけるようにトラブルは続き、その後は“池ポチャ”。さらには8フィートのパットからダブルボギーをたたき、今に怒りが爆発するのではないかと観客が身構えていたほどだった。テレビ放送では、「ティポットのお湯が沸く瞬間は誰でもわかる」と皮肉も飛び出した。だが、観客はほっと息をつくことになる。決勝ラウンド2日間をオーバーパーとしたものの、なんとか米ツアー初優勝を手に入れた。
欧州ツアーを含めて世界10勝している実力者。成績だけ見れば尊敬に値するトップ選手にも関わらず、“キレキャラ”としてマイナスな注目を集めがちなのがもったいない。米ツアーのトップ選手のうち、どれだけの選手があれだけ感情をあらわにするだろうか。
ミスショットを打てば、「ああ、なんて素晴らしいショットだ!ちょっと25ヤード左に行ったのが残念だったけどね」と、ウィットに富んでいながら挑戦的ともとれる発言。2016年には当時24歳だった大先輩のゲーリー・エバンスに、「大人になれよ」と声をかけて怒らせた。
とはいえ、“キレキャラ”はハットンに始まったことではない。普段は腰の低いウッディ・オースティンも、パターを外したときにクラブで頭をたたいて気絶しそうになったことがあった。米ツアー20勝のヘイル・アーウィンでさえ、ガミガミと怒り続けることで有名だった。
自分の言動に問題があるのは、ハットン自身が百も承知だ。「怒ることにはポジティブな面も、ネガティブな面もあると思う。ただ、罰金を科されるようになったら問題だし、よくないこととは分かっている」という。
「もし同組の選手に迷惑をかけてしまったら問題だし、それを意図しているわけではない。ただのリアクションなんだ。自分の気持ちに正直なだけで、発散している感じなんだ。だからあえて隠そうとはしない」。
ソーシャルメディアで、自分が怒り狂っている動画がたくさん投稿されているのも知っている。「たぶん、自分はゴルフコースで面白い瞬間を作り出そうとしているんだと思う。それが今のところ、“怒る”というリアクションになってるんだ。時には思慮に欠けた言動が出ることもあるけど、それが出たら注意してほしい」
“キレキャラ”という個性でツアーをにぎわせるハットン。彼が潔く非を認め、見事なプレーを見せていく限り、ファンはハットンに魅せられていくことだろう。
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