<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 2日目◇7日◇茨城GC東C(茨城県)◇6630ヤード・パー72>
鈴木愛は昨年、5年ぶりに優勝なしの一年を過ごした。「JLPGAツアーチャンピオンシップ」では2020年を振り返り、「ひと言でいうとつまんかったし、おもしろくもないし、何ひとつうまくいかなかったから、早く終わってくれて良かった。途中ゴルフをやりたくないと思っていた」とまで語っていた。そんな女王が久しぶりに2位タイの上位で週末を迎える。
今年に入ってもなかなか調子が上がらなかった鈴木。転機が訪れたのは、2週間前の「フジサンケイレディス」だった。頼んでいたキャディの体調が悪くなり、急きょ、鈴木のクラブを長年担当しているピンの浦山康雄氏が、鈴木のバッグを担ぐことになった。
ドライバーで左へのミスが目立っていた鈴木。それを見た浦山氏は「鈴木プロの持ち球はドローで、右に打ち出してから左に戻ってくる。そのときはフックの度合いが強くて左にミスしていた。もともと右プッシュは出るけど、左へのミスは出るタイプではない」と鈴木の変化に気づいた。
このエピソードで『何をいまさら』と思うかもしれないが、昨年からのコロナ対策で、浦山氏をはじめとするツアーレップはコースの練習場には入れるものの、練習ラウンドや試合の様子を直接見ることができない。ところが、今回鈴木のバッグを担いだことで「実際に見ていたのと、話で聞いていたのとは違う」と浦山氏は感じたのだ。試合で鈴木に起こっていることがようやく理解できた。
鈴木自身も「確かに去年も今年も練習のときは上手く打てるけど、ラウンドに入るとしっかり振り切れているので、つかまりすぎていた。『そう言われればそうだな』と。自分だけだと打ち方が悪かったのかなとすごく考えていました」と、19年にはなかった変化を感じていた。
再び浦山氏の話に戻そう。「鈴木プロは『調子は悪くないんだけどスコアが出ない』と言っていた。練習ではフェードの練習もしていたんです」。試合も始まっていたので、スイングを直すのは難しいと感じていた浦山氏は、クラブで調整できないかと考えた。
「いままで使っていたドライバーとまったく同じスペックで、ヘッドにジェルを入れて、気持ち重心を遠くしました」。重心距離が短いとヘッドが返りやすくなり、ボールは左に飛ぶが、重心距離を遠くすれば、ヘッドの返りが抑えられて、本来のドローが打てると浦山氏はにらんだのだ。「3ラウンドで6回のミスが半分になればスコアが良くなると思いました」とも話している。
前週の「パナソニックレディースオープン」に間に合うように、浦山氏が送った1本のドライバーが見事に鈴木の今のスイングにハマり、本来のドライバーの安定感をもたらしている。鈴木は「きのうは2、3ホール、ティショットが良くなかったところがありましたけど、きょうはほぼノーミスでいけた」と6つのバーディを量産して、メジャーの難コースを攻略。ドライバーが曲がらずパットが入る。強さを取り戻した鈴木の存在が、週末を面白くしそうだ。(文・下村耕平)
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