今週から、国内男子ツアーに破格のニューカマーがやってくる。下部のAbemaTVツアーで今季3勝を挙げた『久常涼』だ。
昨年18歳でプロ転向、今年の春に高校を卒業したばかりの新人。ツアーの出場優先順位を決めるQTは1212位と、下部ツアーも出場が厳しい位置。推薦で参戦した「太平洋クラブチャレンジトーナメント」で3位タイに入って翌週の出場につなげると、そこでも6位タイ。3試合目の「ジャパンクリエイトチャレンジin福岡雷山」で初優勝を挙げた。
下部ツアーでシーズン3勝を挙げると、そのシーズンはレギュラーツアーに昇格できる。先日の「ISPS HANDA ヒーローになれ!チャレンジトーナメント」で3勝目を達成し、この権利を行使した初めてのプレーヤーになった。「アマチュアタイトルに興味はありませんでした」と気持ちよく言い切る型破りなルーキーの、唯一無二の人柄やゴルフ観に迫る。
■団体競技はつまらない ゴルフに本腰を入れた理由は「自己中の極み」
――ゴルフを始めたのは3歳からと聞きました。きっかけは?
「3歳なので記憶は正直無いんですけど、最初はお父さんの練習について行った感じでした。本格的にやり始めたのは小学校の1年生くらいからです。始めた当時は、本当は練習も全然行きたくなくて、ゴルフをするのが嫌だったんです(笑)」
――小学校の頃は、ゴルフ以外に好きなスポーツはあったんですか?
「小学校3年くらいまでサッカーをやっていました。サッカーは楽しかったんですけど、団体競技の誰かのミスで負けたりする部分が面白くなくて、それでつまんないなと思うことがあって、ゴルフにという感じです。ゴルフだったら全部が自分の責任なので、全部自分主導の世界のゴルフは自分に合っているなと思います。自己中の極みですよね」
――実際にプロを意識したのはいつ頃?
「中学生くらいには、これでやっていこうとは思っていました。ただ、思っていてもなれるかどうかは別なので、自分がどこまでできるのかという気持ちでやっていました。中学2年の時に初めてツアーに出場して、その時にこんな舞台でゴルフができるのはいいなと思ったのは、ある意味でプロを目指すきっかけだったのかもしれません」
■本当は、米国の大学に行きたかった “高卒プロ”を選んだ理由
――大学進学は考えなかった?
「日本の大学からもお話はいただいていたんですが、アメリカの大学に行きたかったんです。ただ、コロナの影響でそれも難しくなって、それでプロ転向を選びました」
――もともと海外志向が高かったんですか?
「ナショナルチームで、海外の試合を色々と経験させてもらったのが大きかったですね。ナショナルチームに入ることは自分の中でも目標だったので、そこでの経験は大きかったです」
――アマチュアタイトルには興味がない、と以前話していましたが?
「そうですね。興味がないというか、仮にアメリカに行けていたら、世界レベルの同世代の選手の中で戦えるわけですから、全米アマとかにも出たり、その中で戦えるようになれば必然的にPGAツアーも狙えるだろし、そういうゴルフに早くなりたかったというのはありました」
■QT1212位、“無職”からの快進撃 5年以内には米国へ
――今年は出場機会がほぼ期待できない状態だった。仮に太平洋チャレンジで3位に入れていなかったら、今の自分はどうなっていたか想像できますか?
「試合がなかったら今年のQTを頑張るしかないので、少し腐っていたかもしれませんね。昨年のQTを失敗した時は、本当に職が無い状態でどうしようかと思っていましたから、本当に1212位からのリベンジを達成できてよかったです。
――長い目で見たときの今後の目標を聞かせてください。
「来年シード権を確実に獲って、3年以内にレギュラーツアーで勝つというのはひとつの目標です。その頃にはPGAツアーも経験し、5年以内にはPGA ツアーを主戦場にできるようにしたいです。世界一の選手になれるような準備をしていきたいと思います」
(取材/出島正登)
■久常涼(ひさつね・りょう)
岡山県出身。2002年9月9日生まれ、身長175センチ。プロ転向は2020年で、今年が実質のルーキーイヤー。『ジャパンクリエイトチャレンジin福岡雷山』で初優勝を飾ったほかAbemaTVツアーで2勝を挙げる活躍。昨年のクオリファイングトーナメントで失敗しランキング1212位からのリベンジを見事果たした。今最も将来が期待されるプレーヤーのひとり。
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