常に真剣勝負に身を置き、戦いを続けるゴルファーたち。過酷な環境でクラブを振っているからこそ出る力強い名言、ウィットに富んだジョーク、そしてちょっぴり天然な迷言たちがある。そんな“ゴルファーのことば”を紹介。今回はレジェンドの中嶋常幸。2013年にレギュラーツアーで優勝争いをしたとき、競り合った当時ルーキーの松山英樹のプレーを見て感じたことばだ。
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「短気より根気」
ツアー通算48勝のレジェンド・中嶋常幸。国内男子のレギュラーツアーで最後に優勝争いをしたのは、難攻不落の大洗ゴルフ倶楽部(茨城県)で行われた2013年の「ダイヤモンドカップゴルフ」。最終日を首位タイで迎えた。当時58歳の中嶋には、ジャンボ尾崎が持つ最年長ツアー優勝記録(55歳7カ月29日)の更新がかかっていた。
首位タイで中嶋と並んでいたのは21歳のルーキー、松山英樹。同年プロ転向し、2戦目の「つるやオープン」でプロ初優勝。その後2戦連続で2位に入り、飛ぶ鳥を落とす勢いで2勝目を狙いにきていた。
21歳のルーキーを相手にも前半はレジェンドのペース。「勝てそうな雰囲気はあった。8番までは」。8番パー3を終えて単独首位に立ったが、9番パー4でショットのミスからダブルボギーを喫して首位から陥落。後半はさらに3つ落として6位タイで終戦。それでも「まだレギュラーツアーでやれる」と存在感を見せた。
中嶋に変わって首位に立った松山は、絶好調とは言えないドライバーを握る回数を減らして、刻みで確実にパーオンを積み重ねる作戦。後続にスキを見せずに逃げ切った。
優勝争いの中でルーキーのプレーを間近で見たレジェンド。「日本のことわざにある“短気は損気”。その逆なワケよ。人生でも短気は色々ぶち壊してしまうけど、彼には短気より根気がある。粘り強さがあるし、無茶をしないよね。できることをしっかりやる選手」。人生にもゴルフにも大切な根気を持っている松山を高く評価した。
ちなみに大会前週、シニアの井戸木鴻樹が「全米プロシニアゴルフ選手権」で男子日本勢初のメジャー制覇を遂げた。それを受けて松山のメジャー制覇の可能性を問われた中嶋は、「井戸木が勝ったんだよ(笑)。愚問だよ。言わなくてもわかるだろう?」。松山のメジャー制覇について、このときからすでに太鼓判を押していた。
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