今季国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第9回は、今季未勝利に終わったものの、平均ストロークで全体7位(71.2273)、トップ10入りは全体8位の11回を数えるなど安定感を発揮、未勝利選手の中では最上位となる賞金ランク15位につけた笠りつ子をフォーカス。2016年には賞金女王を争ったショットメーカーのスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。
【連続写真】ショットメーカー笠りつ子、要はボディターンにあり
今年もパーオン率が2位と正確なショットを武器にする笠りつ子さんですが、典型的なボディターンスイングを実践しています。細かく見ると、アドレスでは、左手親指のアングルに特徴があります。手首と腕の角度をつけずに、親指をボールに向けています。たいていのゴルファーは手首の角度をつくり、親指をボールよりも上に向けていますが、クラブヘッドは地面の上にあるわけですから、笠さんの構えは理に適っているといえるでしょう。もしくは、ノーコックのままクラブを上げることに適しているかもしれません。指先を下に向けることにより、ノーコックとなり、手首を固定しているからです。しかも、右手と左手の間隔を詰めないことで、手首をまったく使わない状況をつくっています。当然、ボールを打つためには、体を使わなければクラブを振れないので、必然的にボディターンのスイングになるわけです。
アドレスでは、首が長く見えますが、これは上半身から力を抜いている証拠です。リラックスして構えたい気持ちが表れています。スイング中は体重移動もしなければ、手首のコックも使いません。非常にシンプルな回転を心がけています。単純に右から左に振るだけという感じです。肩からクラブヘッドまで一つになったものを全身で捻り上げ、勢いをつけて捻り戻すイメージです。ダウンスイングでは右ヒジを絞ってクラブを下ろしていますが、これはフェードヒッターに多く見られる現象で、笠さんも例外ではないようです。
バックスイングで左肩はしっかりと入っていますが、クラブの位置はそれほど深くありません。普通ならトップでもっとヘッドが下に垂れていると思われますが、この位置にキープすることにより、タイミングを合わせているのでしょう。ダウンスイングで振り遅れずに、体の正面でボールをとらえられる理由の一つですね。手首のコックを使わず、アドレスでのアングルを動かさないわけですから、ショットの安定性は当然だといえます。しかも、笠さんの場合、飛距離が出てボールも上がります。手を使わない分、下半身と上体が同時に下りてくるので、それだけボールにパワーをしっかり伝えられるからです。あくまでもボディターンをするためのスイングであり、手でクラブを操作する部分は一切ありません。ただし、アベレージゴルファーが簡単に真似できるかといえば、話は別でしょう。
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