<ゴルフパートナー PRO-AM トーナメント 最終日◇22日◇取手国際ゴルフ倶楽部 東コース(茨城県)◇6804ヤード・パー70>
15番ホールのティイングエリアに立った時点で、最終組の大槻智春はトータル23アンダーまで伸ばしてトップに立ち、トータル20アンダーの今平周吾とは3打差がついていた。上がりのホールは、スコアを伸ばしにくいタフなホールが続く。先週に続く2週連続優勝を狙っていた今平本人も「流れも良くなかったしきょうは厳しいかな」と思っていた。
ところが、15番で潮目が変わる。今平は残り220ヤードから5メートルにつけてバーディ。対する大槻はボギーを打って、その差は一気に1打に変わった。続く実測160ヤードの16番パー3でも2メートルのチャンス。これは外したものの、17番パー4では残り50ヤードのセカンドショットを2メートルにつけてバーディを奪い、ついに大槻をとらえた。
その時点でトータル22アンダーにいたのは、「59」をマークし1時間半前にホールアウトしていた近藤智弘、最終組の1つ前を回る比嘉一貴、最終組の今平と大槻の4人。比嘉は最終18番で3パットのボギーを叩いて脱落し、今平と大槻は最終ホールをパーでまとめて近藤と3人のプレーオフとなった。
「チャンスはあると思った」と今平。「59」を出した近藤については「調子がいいんだろうなと思っていた。手強い相手だなと。でも1時間半前から待っていたのは近藤さん的には不利だったかな。僕と大槻さんのほうが上がってからすぐプレーオフだったので、流れ的には良かった」と感じていた。
18番ホールの繰り返しで行われたプレーオフ1ホール目は、今平の読み通り、セカンドショットをグリーン右のバンカーに入れた近藤と大槻に対して、今平はピンの左5メートルのバーディチャンス。「これを決めれば優勝できると思っていた」。そのウィニングパットはカップ左を通過して決着はつかず。大槻は1.2メートルのパーパットを右に外して脱落、パーセーブした近藤と2ホール目に進んだ。
近藤のティショットはフェアウェイをとらえ、今平のティショットは左のラフへ。セカンドショットを先に打ったのは近藤。「近藤さんがフェアウェイから良いショットを打って、セカンド地点からはボールが見えなくて、どのくらいについたのかわからなかった。でもギャラリーの歓声が上がって2メートルくらいについたのかなと思った」。サドンデス方式のプレーオフ。近藤よりも内側を目指して打った今平のラフからのセカンドショットは「5メートルくらい残ってしまった」。
ここで今平は勝負の流れを読む。相手はきょう合計11個のバーディを沈めた近藤。「これを決めないとバーディを決められると思っていたので、あのバーディパットは狙って打ちましたね」と、近藤の前で先にバーディを決めて見せた。近藤の3.5メートルのバーディパットはカップの右を抜けて勝負あり。2016年の谷原秀人以来となる2週連続優勝を達成した。
プレーオフで敗れた近藤はこう振り返る。「最後は勝負の流れというか、もう少し入れなきゃいけない状況じゃなく打ちたかった。追い込まれているというか、ああいう状況ではなく打ちたいと思った。周吾のあのパットがすごいなという感じ。最後はちょっとフックだなと思って打ったんだけど、やっぱり『入れなきゃいけない』が強く出た。ちょっとパンチが入った」。近藤のバーディパットはカップの右を通過。今平が先に入れていなければ、優勝カップを掲げていたのは近藤だったかもしれない。
先週の優勝で今年の「全英オープン」の出場権をつかんだ今平。そしてあすは「全米オープン」出場をかけて、千葉県のカレドニアン・ゴルフクラブで行われる36ホールの最終予選会に出場する。この勢いに乗って「全米オープンの切符も獲りたい」と静かに意気込む今平だが、今週の「全米プロゴルフ選手権」に出場できなかったことはどう思っているのか?
「世界ランキングをかなり落としているので、出られなくて悔しいといよりは、普通に試合を見ているのは楽しいですね」と、全米プロの再放送を楽しんでいる様子だ。この優勝で世界ランキングも109位から80位台にまで上がる見込みだ。
ツアー7勝目にして、男子ツアー恒例の勝者へのウォーターシャワーを初めて浴びた今平。「嫌ですね…」と素直に漏らすも、即座に「でもうれしいです」と言い直した。疲れた顔にも充実感が浮かんでいた。(文・下村耕平)
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