<リゾートトラストレディス 最終日◇29日◇メイプルポイントゴルフクラブ(山梨県)◇6580ヤード・パー72>
「久しぶりに仕事したなって感じです」。ツアー通算13勝を誇る成田美寿々が今季5試合目で初めて予選を通過し、52位タイで4日間を終えた。オフトレでの腰痛などから極度の不振に陥った2020-21シーズン。賞金ランキング102位でシード落ちをしたが、ここから再起を図る。
「ティショットさえコース内にいてくれれば、なんとかなるって分かりました。泥臭く3番ウッドを持ったり。予選は通るゴルフができていました」。アイアンショットは全盛期のようなキレを取り戻し、チャンスを多く作った。
「こんなに入らないかっていうぐらいパットを外しました。二けたアンダーいってもおかしくない内容」。初日に今季初のアンダーパーとなる「70」をマークするなど、グリーン上次第でスコアを作れるようにまでなった。
不振に陥った大きな原因はドライバーショットだ。「今でもドローを打とうとするとチーピンするか、右にすっ飛ぶか。練習ではいいんですけど、ラウンドではまだダメですね」と話す。アイアンショットの不振から始まり、全体に“伝染”していったというが、とりわけドライバーに関しては、曲がり幅が大きく、悪いイメージが染みついてしまっている。男子でもベテランほど同じような悩みを抱える選手は多い。
井上透コーチと二人三脚で修正を図り、「アイアンショットは全盛期に近い。ほぼパーフェクト」(井上コーチ)までに復調。残りの課題はティショットだ。今週、帯同キャディを務めた井上コーチはロープ内で再確認した。
「技術じゃないんです。どんなにいいスイングをしても、気持ちでボールは曲がってしまいます。元々ドライバーが得意で何も考えずにビシッと打っていた頃のように戻るのは、簡単ではない。イメージが湧くホールで、イメージが湧くことをやるのが一番の解決策。その成功体験を重ねることが大切です」(井上コーチ)
野球で例えると、投手がストレートやカーブでストライクを取れなくても、シュートボールでストライクを取れるならば、それを投げればいい。ゴルフもドローがダメならフェード、ドライバーがダメなら3番ウッドと、ホールに合わせてイメージの湧く球筋で、フェアウェイやコース内に止まるボールを打てばいい、という。
「2年半、失敗体験やりましたから」と自嘲気味に話す成田。今大会はコース内に飛ばせるイメージが湧かないホールでは、ドライバーを握らずに3番ウッドを選択した。すべてが振り切っての会心の当たりではないが、第3ラウンドはフェアウェイキープ率100パーセントをマークするなど、多くの成功体験を得られた。
順位的には初日の15位から徐々に落として52位タイとなったが、「予選を通って50番でも、通り続けることで順位も上がってくると思います。今のテーマを積み重ねることが大事ですね」(井上コーチ)。次戦以降も、同じテーマを持ってティショットの成功体験を増やす作業が中心となる。
予選落ち続きから脱却した今週。「ドライバーがどこでも打てるように回復するまでは…長いかな。でもこの試合は大きな一歩です。まだ30歳になっていないから、頑張ろうかなって気にはなっています」。何も考えずに気持ちよくドライバーを振り切る若手をうらやましく思いながら、成田は着実に復活ロードを歩いている。(文・小高拓)
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