以前、韓国でのジュニア選手の育て方についてこんな話を聞いたことがある。「とにかく好きなものをたくさん食べさせて大きくするんですよ」。そうやってアスリートとしての体を作っていくという。一方、日本では今でもゴルフのジュニア問わず「好き嫌いなく食べること」を教えることが多い。どちらがいいか悪いかではなく考え方の違いだろう。もちろん、好き嫌いなくたくさん食べて大きいのが一番いい。
では、好き嫌いをなくすためにはどうするか。特に小さい子はそのままだとなかなか食べてくれないから、親がおいしそうに食べたり、いい食材にしたり。はたまた濃い目の味にしたり、他の食材と混ぜたりして存在がばれないようにと、世の親御さんたちは苦心しているのではないだろうか。
なぜ、こんな話をしたかといえば、先週行われた米国女子ツアー「Danaオープン」が、実は渋野日向子の“好き嫌い”を克服する一歩目になるように見えたからだ。
春先から渋野が米国で苦しんでいるのが、日本ではほとんど見られないポアナ芝のグリーン。別名クサリカタビラと呼ばれるその芝は、西部、特にカリフォルニア州で見られ、ボールの速さや方向が一定になりにくい。特に午後になるとポコポコと跳ねるから、さらに厄介だ。渋野以外でも苦手な選手は少なくない。
今大会の舞台・ハイランドメドーズGCがあるオハイオ州は米国の中部に位置するが、そのポアナ芝を含むグリーンだった。とはいえ100%ではなくベント芝とのミックス。畑岡奈紗が「まだ、スムーズに転がってくれている。もちろん、午後になると跳ねてくるし、カップ周りなどは気をつけたい」といえば、笹生優花に至っては「ここポアナ? あまり気にしていない」というほど。
それでも、やっぱりポアナはポアナ。開幕前に渋野はグリーンについて聞かれ「いつも通り気にしない」と考えすぎないことを心がけるとした。これは多少なりとも回っていて感じるところがあったということだろう。
午後スタートとなった初日はショットの部分で、グリーンの難しさを味わうことになった。「グリーンに向かってショットで打ったときに、思ったよりも跳ねたところがあってそれで奥に行ってしまうところがあった」。受けグリーンが多いコースで手前からいきたいところでもオーバーしてしまう場面も少なくなかった。
それだけに奥から下りの難しいパットが残ることが多かった。だが「傾斜につくことが多かったのでスピードがどうこういう感じでもなかった。距離感は合っていたと思う」と、パターで粘りを見せた。ショット面がよくなった2日目含めて、2日間の平均は「29パット」。短いのを外す場面もあったが「芝というよりは私のミスです」とポアナの影響はなかったことを強調した。
米国で戦ううえでは避けては通れないクセのある芝。これまでのゴルフ人生で経験していない以上、慣れるまでに時間を要するだろう。そもそも『慣れたところで…』、という芝質でもある。それでもまずはミックスで気にすることなくプレーできた。苦手意識をなくすこと。それは好き嫌い克服の第一歩ではないだろうか。(文・秋田義和)
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