もうすぐスタートなのに、どうしてもラウンド前にボールを打っておかないと気が済まないという人がいます。しかし、朝バタバタしている中での練習は、まず効果がない。“不安だから”、“取りあえず”練習して、コースに出たらショットがよくなったためしはほとんどありません。
「迷い」こそ緊張と不安の悪循環を生みスイングを崩す真の原因 いいスイングには自律神経の安定が必須!
というのも、朝は副交感神経から交感神経優位に切り替わる時間帯。心身が緊張して、なかなかスムーズにクラブを振れないものです。その状態でムキになってボールを打つと急激に交感神経が優位になって落ち着いた心理状態でスタートを迎えることができないのです。 ■練習場で打つより5回の素振りを! それより間違いなくいえるのは、時間がないときは素振りをしたほうがいいということです。クルマの運転で硬くなっている体を緩ませ、温めるには素振りが最適。5回くらいで十分ですから、思いきりクラブを振ることによって体のリキミや緊張はかなり軽減します。交感神経の高まりを抑え、バランスが整うのでオススメです。 とはいえ、やはり練習は時間があれば、するに越したことはありません。その際、必ず心がけていただきたいのは、何十球も打たないようにすること。 ■自分のルーティンどおりの球数を打つ 私の場合は、50度のウェッジでまず8球。その後7番アイアンを短く持って3球、フルに持って3球打ちます。フェアウェイウッドやユーティリティは一切打たず、あとはドライバーを5球ほど。それだけです。 私のホームコースでは練習場のボールカゴは24球入りなので、必ず球は余ります。計算が合わないのではなく5個残すよう、あらかじめ計算しているのです。 なぜかというと、例えばドライバーを5回振っただけでわずかに筋肉が破壊され、筋力が戻るのに30分くらいかかります。ボールをたくさん打てばそれだけ疲労が増し、回復に時間もかかります。次第に当たらなくなって「どうしたんだろう?」といった焦りからますます緊張し、交感神経が急上昇してしまうのです。「どうしよう」という不安を抱えて朝一番のショットを迎えることになりかねません。24球のうち5球余らせるとなると、まだ打てるのにもったいないなあと思うかもしれません。しかし、実行するうち、残した球のことより「自分の決めたとおりの球数を打つ」ことに目が向くようになります。それによって19球に対して満足感を得ることができ、心に余裕が生まれます。 ともすると下がりやすい副交感神経のキープにもつながり、自律神経のバランスが整うのです。好調でも、不調でも、練習ボールは必ず5個余らせる。これをルーティンにして心に余裕を持ち、自律神経を整えてスタートしてみてください。(文・小林弘幸 構成・野上雅子) ●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。
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