<WGC-ブリヂストン招待 最終日◇5日◇ファイアーストーンCC(7,400ヤード・パー70)>
ジャスティン・トーマス(米国)の優勝で幕を閉じた世界ゴルフ選手権「WGC-ブリヂストン招待」。今大会は今年でメインスポンサーのブリヂストンが撤退。来シーズンから「WGC-フェデックス・セントジュード招待」(7月25〜28日)として名称が変わるとともに、フェデックス社があるテネシー州のTPCサウスウインドへと舞台を移す。
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今大会は1999年に世界ゴルフ選手権入り、「NEC招待」となったタイミングからオハイオ州のファイアーストーンCCへとコースを移し、06年にメインスポンサーが替わり現在の名称となった後もコースは変わらずに行われてきた(02年のみワシントン州・サハリーCCで開催)。
そんな、これまでの20年間では、幾多のドラマが生まれてきた。タイガー・ウッズの2度の3連覇、13年に8度目の優勝、そして17年には松山英樹が日本勢として初の大会制覇を成し遂げた。諸般の事情があるにせよ、そんな歴史を見守ってきたファイアーストーンCCから通年の大会がなくなってしまうのは寂しい気がしてならない。
確かにクラブとスイング、そして選手の体格が進化した現代では7400ヤード・パー70という総距離もPGAのトップ選手たちを見ているとそこまで長く感じさせない。今年はグリーンの軟らかさがあったとはいえ、優勝スコアは15アンダー。ツアーでもロースコアの部類の戦いとなっている。
また、開催当初はあまり考えられなかった名物ホールでもある667ヤードの16番パー5で2オンする選手も出てきた。最終日の難易度は14番目。60年の「全米プロゴルフ選手権」のときにこのホールでトリプルボギーをたたき“ザ・モンスター”と名付けたアーノルド・パーマーも、草葉の陰で苦笑いしているだろう。
それでも、みんなファイアーストーンが大好きだ。ここで8勝を挙げており、ツアー最後の優勝を13年に飾っているのもここという、まさに“庭”と呼ぶべきウッズは「私はこのゴルフコースのファン。お気に入りのコースの1つ。ここではたくさんの思い出がある。事情も理解はしているが、変わってしまうのは残念」と寂しそうにいう。だからこそ世界ランク50位以内に滑り込んで「今年戻ってこられて良かった」と口にした。
16年覇者で世界ランク1位のダスティン・ジョンソン(米国)もファイアーストーンを愛する1人。「このコースはかなりフェアウェイが絞られていて、そして長い。ラフは常に立っており、グリーンは小さくアンジュレーションがある。だから気をつけなければいけない。最高のコース。でも…、最低のコース、自分の調子が悪ければ(笑)。それだけ難しいし、試される。だからこそいいコースなんだ」と冗談を交えつつ、愛を語っている。そんなみんなが大好きと公言するコースから、大会が離れるのである。
また、ブリヂストンというだけあって日本人にもなじみ深い大会であった。特に最終日には日本からの招待客をはじめ、多くの日本人ギャラリーが詰めかけ、世界の選手たちの一挙手一投足を見守った。その中の一人は「今年で最後となるのはとても寂しい」という。こうして日本人が米国ツアーに触れる機会が減るのも悲しいことだ。
多くの選手がかみしめるように回った最終日。ウッズが18番でバーディチャンスにつけたときに自然に巻き起こった「サンキュータイガー」コール、そしてバーディで締めたときのスタンディングオベーションはとても感動的だった。
来年からはWGCがなくなるが、替わりにブリヂストンがメインスポンサーとなったチャンピオンズツアー「シニア・プレーヤーズ選手権」が行われる予定。往年のレジェントたちが熟練の技術でファイアーストーンを攻略にかかる。それはそれでとても面白そうだが、“ザ・モンスター”に挑む世界各国の怪物たちの勇姿を見られなくなるのはとても残念である。(文・秋田義和)
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