米ツアーの今季レギュラーシーズン最終戦、「ウィンダム選手権」は37歳のベテラン、ブラント・スネデカー(米国)の勝利で幕を閉じた。
【写真】C.T.パンと美人妻のミッシェルさん
初日に米ツアー史上9人目の「59」をマークしたスネデカーが4日間、首位を守り通した完全優勝は、一見、順当な勝利のように思えるかもしれないが、彼の胸中は想像以上に複雑だった。
「木曜日に59を出したけど、その後は毎晩、すごいプレッシャーを感じ続けた。この優勝は僕にとって、とても大きな意味を持つ」
思わず込み上げたうれし涙は、この2年半の苦悩からようやく解放された安堵の涙でもあった。
スネデカーといえば、何度もメジャー優勝に王手をかけながら、いまなおメジャーは未勝利。だが、米ツアーでは次々に勝利を収め、今回は通算9勝目となった。そして何より2012年のフェデックスカップ年間王者に輝いた強者だ。
しかし、2016年の「ファーマーズ・インシュランス・オープン」を最後に勝利から遠ざかり、昨年は胸骨を痛めて7月以降の大会をすべて棒に振った。「全英オープン」、「全米プロゴルフ選手権」にも出場できず、あらゆるランキングがみるみる下降。今年から戦線復帰したものの、世界ランキングを上げきれず、4月の「マスターズ」には出られなかった。
だが、いつか必ず復活できると信じ、黙々と練習を重ねてきたスネデカーは、先週の全米プロで、ようやくきっかけを掴んだ。
「ショットのいい感触が得られた。来週は、いいプレーができそうな気がする」
予感は的中し、今週は初日から「59」をマークして好発進。だが、あまりにも良いスタートを切ったからこそ、そこから落ちて崩れる恐怖も感じ、残る3日間はプレッシャーとの戦いになった。
最終日。そんなスネデカーに最大のプレッシャーを感じさせたのは、一時は首位に並んだ26歳のC.T.パン(台湾)だった。パンが18番でOBを打ってダブルボギーを喫し、スネデカーは18番をバーディーで締めくくったことで、最終的には3打差の勝利となったが、スネデカーを最後まで追い詰めたパンの存在は大きな注目を集めた。
台湾で生まれ、5歳からゴルフを始めたパンは、以後、米国フロリダ州にあるIMGアカデミーへゴルフ留学し、ワシントン大学ゴルフ部、カナディアンツアー、ウェブドットコムツアーを経て、2017年から米ツアー参戦開始。今大会では最後の最後に自滅する格好で勝利を逃したが、「悪いショットは(最後の)1打だけだからOK。まだツアー2年目だし、まだ僕は若いし、来週からのプレーオフが楽しみだ」。
バッグを担ぐ美人キャディは妻のミッシェル。パンはOBを打った直後でもロープをくぐる際に妻のためにロープを持ち上げてあげたり、笑顔を見せたり。そして、プレーを終えた瞬間、満面の笑顔で頷き合うポジティブな若い夫婦の姿に彼らの将来性が感じられた。
松山英樹の復活にも大きな期待が膨らんだ大会になった。松山もスネデカー同様、予感めいたものを感じ取り、それが決勝2日間の好プレー、好スコアにつながった。「こういうプレーを続けられれば自ずと上位にいける」と頷く一方で、「ショットの不安は消せてない。アプローチやパットの不安はまだある」と険しい表情を見せたが、フェデックスカップのランキングは88位から76位へ上昇。ともあれ前進できたことが自信と糧になってくれたらいい。
フェデックスカップ125位に食い込んでプレーオフへ進むことを目指していた選手たちの中では、ニック・テイラー(カナダ)やハリス・イングリッシュ(米国)が笑顔になった一方で、セルヒオ・ガルシア(スペイン)はプレーオフ進出を逃し、苦渋の表情で去っていった。
悲喜こもごものレギュラーシーズン最終戦。笑った人は得たものと喜びを今後へつなげ、悲しんだ人は失ったものと悔しさを今後へ生かしてほしい。
誰もが今大会を活力へ。そうすれば、来季はもっとたくさんの笑顔が見られるはずだ。
文・舩越園子
<ゴルフ情報ALBA.Net>