プレーオフ第2戦のデル・テクノロジーズ選手権は、いろいろな選手に、それぞれのドラマがあった。
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今年2月に左手を故障して以降、トップ10入りが一度もなかった松山英樹が、シーズン終盤の今大会でついに優勝争いに絡み、4位タイに食い込んだことには大きな意味があったのだと思う。
松山自身は前半の快進撃も「感触は良くなかった」ときわめてクールで、むしろ「4日間ともバック9でうまくプレーできなかった」と後半の連続ボギーから失速していった悔しさをかみしめていた。だが、今年2月以降に味わってきた長い不調や苦悩を思い起こせば、たとえ一時的であれ、リーダーボードの最上段に浮上したことは大きな前進だった。
そして次戦のプレーオフ第3戦へ進めること、最終戦進出の可能性も高まってきたことも含め、ようやく目に見える前進が得られた意味は多大だ。
小平智は残念ながら今大会で予選落ちとなり、プレーオフ第3戦進出の道も絶たれた。今季の米ツアー全日程を終え、早々に帰国の途についた小平。それは、プレーオフというシステムにおいては「敗退」には違いない。
だが、4月のRBCヘリテイジ優勝から突然はじまった米ツアー本格参戦のわずか5カ月弱の中で、きっちりフェデックスカップランキング125位以内に食い込み、プレーオフ第1戦、そして第2戦と進んだことは、彼の必死の奮闘の結実だったのだと私は思う。
今年の5カ月弱は慣れるための準備期間と考え、「来年こそは米ツアーで勝負したい」。小平が来年、その言葉を実現できたら、日本の他の選手たちにとっても大きな希望や励みになることだろう。
最終日。優勝争いの大詰めは混戦状態になった。先週のノーザン・トラストに続き、今週も勝利を飾ったのは米国のブライソン・デシャンボー。プレーオフ2連勝は実に見事で、堂々の勝ちっぷりには貫禄さえ漂っていた。だが、彼はまだ米ツアー3年目の24歳。3日目には「11歳ぐらいから、ずっと僕の憧れの人だった」というタイガー・ウッズと初めて同組で回り、「出だしから、すごく緊張した」と明かしたほど初心(うぶ)な面もある若者だ。
先週もこの欄で触れた通り、今年のデシャンボーにはいろんなことが起こった。手にしたパターも編み出したパッティングのスタイルも、どちらもルール違反と指摘され、どちらも変更。試合中にコンパスを使用して、それもルール違反とされた。欧州ツアーの大会では、惜敗した悔しさのあまり勝者を祝福せず、マナーやスポーツマンシップを問われる騒動もあった。
それだけたくさんの出来事に遭遇しながら、それらを全部自力で潜り抜け、今季3勝目、通算4勝目を挙げ、しかもランキングと大金がかかるプレーオフで2連勝。何がどうであれ、その底力とメンタリティは見上げたもの。人々の口を実力で封じるとは、こういうことを言うのだと思う。
オーストラリアのキャメロン・スミスもあなどれない存在のようだ。欧州ツアー1勝、米ツアー参戦4年目の25歳だが、プレーオフに突入してからは第1戦も第2戦も3位。成績を出すべきときにタイムリーに出す選手へと成長しつつある。
プレーオフは今季までは4試合が行なわれるが、来季からはノーザン・トラスト、BMW選手権、ツアー選手権の3試合に減ることが決まっている。
試合数が4つから3つに減れば、タイムリーに結果を出すことが一層求められるようになる。もちろん、プレーオフのみならず、どんな試合においても、最後に笑うのは最後に誰よりも少ないスコアで上がった人。
そんなゴルフの戦士の在り方をデシャンボーが誇示した2週間だった。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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