国内開幕戦で優勝した熊本出身の重永亜斗夢を筆頭に、今季すでに2勝の秋吉翔太(熊本出身)、先週ツアー初優勝を挙げた出水田大二郎(鹿児島出身)。今季はここまでを振り返れば、優勝した日本人選手の多くが九州出身だ。
【写真】バンカーショットのアドバイスを受ける様子
この九州勢の強さは、一体どこにあるのだろう。秘訣に迫るべく、先週優勝したばかりの出水田の練習ラウンドを見にいくと、さっそくその片鱗が見えた。
出水田が一緒に回っていたメンバーは、2014年賞金王の小田孔明、秋吉、北村晃一のいわゆる“チーム孔明”だ。練習ラウンドはほぼこのメンバーで行っているというだけあって、冗談を言い合いながらとても楽しそうだ。しかしその合間には「小田さん、この距離ってこの番手ですかね」「ここの傾斜はどうですか」と、要所要所で若手3人が小田にアドバイスを求める場面が何度も見られる。
「孔明さんは経験豊富な方なので、コースや状況に応じたマネジメントを教えていただいています」というのは出水田。もともと小田に教わっていた秋吉の誘いで、昨年の秋ごろからチームに加わった。
九州勢の選手を中心に集まって、技術論をガッツリ教えるというよりも、コースや大会について“伝授”しているという様子。なるほど、九州勢の強さはここにあったのか。「いろいろなプロと回って、いいところを見て、自分だけのプレーで気づけないところが見えてくる。経験してきたことを伝えることしかできないが、翔太たちが僕くらいの年になったときに、下の選手につないでいったらいいと思う。それが九州の伝統」と小田は語る。
チーム孔明ではないが、重永も九州の結びつきを感じている。「みんな集まって仲がいいけど、同じ年というよりも、一回りとか10歳くらい離れた選手同士が多い。僕なんかは、手嶋多一さんとよく練習ラウンドを回らせてもらっている」。
九州勢に限らず、こうしたプロ同士の集まりは他にも存在する。芹澤信夫率いる「チームセリザワ」には、藤田寛之らベテランから、男女プロの若手まで在籍。谷口徹は、オフシーズンに若手選手を集めた合宿を行っている。“チーム”とまではいかなくても、仲のいい先輩プロを見つけて教わる若手選手も多い。
現役のベテランプロから教わるというのは、男子特有の伝統なのかもしれない。シード選手の平均年齢を見てみると、女子ツアーの今年の平均年齢が27.1歳。対して男子ツアーは32.7歳。40歳以上のプロも多く現役として活躍する男子ツアーは、身近に学べる存在が多く、こうした師弟関係を築きやすいこともある。
当然、トーナメントに入ればライバル同士。個人競技の世界だが、技術や経験を伝え合い、切磋琢磨しあう存在でもある。選手たち一人ひとりの強さの裏には、実はこういったチームの存在があった。(文・谷口愛純)
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