「ZOZOがゴルフの試合をやるんでしょ?そうするとどうなるの?」。近頃、多くの友人、知人からされた質問がこれだ。
【写真館】昨日新たに入会式 女子ツアーは続々と新しいプロが出てきているが…
そう、先ごろ発表された来年、日本で行われる米国男子、PGAツアーの「ZOZO選手権」(10月24〜27日、千葉県・習志野CC)の件だ。ゴルフをしない人からも驚くほど尋ねられ、正直、驚いた。
テレビやスポーツ紙などのニュースで取り上げられたし、賞金総額975万ドル(約11億円)、優勝賞金175万ドル(約2億円)というケタ違いの賞金額に驚いた人も多かっただろう。だが、それ以上に、大会スポンサーであるZOZOの事業であるファッション通販サイト、ZOZOTOWNがポピュラーだったこと、前澤友作社長の知名度によるところが大きいようだ。
おかげで、色々な人に米国と日本のツアーの違い(賞金額も含めて)などを説明することになった。仕事柄、同様のことは多いが、今回ほど「一から説明した」ことはあまりない。それほど、同大会開催のニュースは、人々の印象に残ったということになる。スポンサーとしての宣伝効果は、すでに大きいといえる。
どうすれば、ゴルフをしない人々がツアーに興味を持ってくれるのか。女子ツアーに限らず、プロのツアーは、そこに注目しなければならない。何度も書いていることだが、女子に限らず、日本のプロツアーの今後の命運を握るカギがここにあるからだ。
ギャラリーの大半がゴルファーであるプロスポーツの命運は、興行としてどれだけ成功させられるかにある。ゴルフとて例外ではない。そのことは、さまざまな表現でこのコラムでもたびたび触れてきた。スポンサーはもちろん必要だが、大口のスポンサーだけに頼る手法は、必ず無理が生じる。一人ひとりが出す金額は少なくても、ファンという“小口”のスポンサーが持つ力はとてつもなく大きい。大口スポンサーは、企業の事情や、ワンマン経営者の気分、あるいは交代などであっさり見捨てられることがある。だが、ファン一人ひとりは、よほどのことがない限り一気に離れたりはしないからだ。また、そういったファンが大勢ついていれば、大口のスポンサーにとっても応援する価値があるということになり、いい循環が生まれる。
今回は、スポンサーの知名度が高かったことでまず、注目されたわけだが、今後は、そこで興味を持ってくれた人の足をどれだけ試合に向かせるかという話になってくる。同大会はPGAツアーの試合だが、日本の日本ゴルフツアー機構(JGTO)も共催に名を連ねており、日本ツアーからも10人以上が出場することになる。つまり、JGTOとしても集客、興行のノウハウを学ぶ絶好の機会となる。その反面、他の試合がPGAツアーとも比較されることは避けられず、興行として、さらなる努力が必要になる。
女子ツアーでは、米ツアーと共同(特別公認)という形で行われている「TOTOジャパンクラシック」という大会がある。1973年にジャパンゴルフクラシックとして始まり、マツダジャパンクラシックの名称だった87年には、岡本綾子が賞金女王を決め、米ツアーの仲間たちに祝福されたシーンはあまりにも有名だ。その後もスポンサーを変えつつ、日本を舞台に30年以上前から開催してきた。
上田桃子のように、ここで優勝して米ツアーに羽ばたいた者もいる。そういう意味では、それなりの効果が出てはいるのだが、残念ながらこの試合を上手に育てることを日本ツアーはしてこなかった。基本的に、大会の運営はエージェントに丸投げで、米ツアーとのパイプを作る格好の機会なのに、ほとんど生かしきれていない。だから、コアなファン以外には、これだけ魅力的なイベントの良さを訴求できずにいるし、それ以上の広がりを見せていない。
現在では中国、韓国などでも試合をしている米ツアーだが、アジアのパイオニアは日本だった。だが、それ以上、発展できていないのは残念な限りだ。それも、より多くのギャラリーに見てもらう姿勢、ゴルフをしない人にも楽しさ、すごさを伝えようという気持ちがないから、残念なままになっている。
同大会の日本開催は、男子ツアーだけでなく、日本のプロツアーの将来にとってさまざまな意味での分岐点となるはずだ。これを上手に利用するのか、それとも飲み込まれてしまうのか。女子ツアーも「男子ツアーの話」と他人ごとを決め込まずに、注目をするべきではないだろうか。(文・小川淳子)
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