「最近の若者は…」という苦言を耳にすることがままあるが、初優勝者が13人と“世代交代”の兆しを見せたゴルフ界でも、まさに同じ言葉が飛び出した。
本大会で優勝を飾った小平智は「今の若い選手は欲が少ないような気がする。物欲もあまりないし、悔しがったり、そういう欲をもっと若手には持ってほしい。そうすれば優勝する選手はもっと増えてくると思う」。今年29歳となった小平自身も十分若手に入るが、今季はさらに年下の活躍が目立った。その“今の若い選手”の顔となるのが、今季の賞金王に輝いた今平周吾、26歳だ。
バーディを獲ってもボギーを叩いても、感情の起伏を表に出さずに淡々とラウンド。プレー中も、イラだった表情や派手にガッツポーズをつくる姿をほとんど見たことがない。その冷静さは“世代”からくるものなのだろうか。
周囲の選手に今平の印象を聞いてみると、必ずといっていいほど出てくる言葉が「安定感」。平均ストローク、平均パット、バーディ率で1位、パーオン率4位、トータルドライビング7位とバランスのとれたスタッツでプレーの安定感は一目瞭然。それに加えて、テンションや状態の波が少ないことも「スキがない」といわれるゆえん。今季2勝の秋吉翔太は、「自分の場合はいいときと悪いときの波があって、いいときに勝っている。周吾の場合はよくもなく悪くもなく、ずっとテンションが一定」と語る。感情の起伏が表に出ないのは学生時代からのようで、同い年の中里光之介は「学生のころからものすごくゴルフもうまかったし、(雰囲気も)ああいう感じでしたよ。全然しゃべらなくて、何を聞いても“うん、うん”しか言わなかった(笑)」。
しかし、柏木一了キャディに聞いてみれば「負けず嫌いですよ。けっこう人の話も聞かなかいという感じでね」。目標とする東京五輪出場に向けて、口には出さずとも、柏木キャディとのメッセージのやりとりで松山英樹と小平超えを密かに硬く決意している様子がうかがえるし、周囲の選手が驚くほど、トレーニングや練習に熱心に取り組む一面も持ち合わせる。
なぜ、それが表に出ないのだろう。本人としては「とくに意識はしていませんし、出しているつもりなんですけど…、ファンの皆さんにはなかなか伝わらなくて、つらいところです」と苦笑い。「他の選手のほうがよっぽど冷静にやっているなと思います。ボギーがきた後とか、たまに投げやりに打ってしまうこともあるし。帽子で隠れているだけで、よく見たら結構表情に出ていますよ。あとは…、ガッツポーズをとるタイミングもわからなくて。優勝争いしているとかならわかるけど、初日とか、どこでガッツポーズをしたらいいのか…、わかりません」と、なんだかちょっとずれた発言もご愛敬。感情表現に関して少し不器用な、同時に、熱い闘志をうちに秘めた165cmの“最小賞金王”の姿が垣間見えた。
対して小平は、「若手の壁になる」と宣言。「米国と日本はレベルが全然違う。向こうで30〜40位にいるときのプレーでも、日本で優勝争いができる」と、アグレッシブな発言で優勝を収め、小平らしい強さを見せた。
「リアクションについても、しっかり伸ばしていきたいです」と冗談交じりに口にしていた今平。今後、ゴルフだけでなくパフォーマンスでも小平超えを果たせるかも気になるところだが、小平の優勝で、よけいに“寡黙な賞金王”の個性が際だった最終戦だった。(文・谷口愛純)
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