第5期、小林浩美政権は、会員たちの信頼を取り戻すことができるのか!?
20日に来年3月からの理事候補者候補選任選挙を行った日本女子プロゴルフ協会(LPGA)は、小林浩美会長、原田香里副会長、寺沢範美副会長以下現職理事6人を再選。定年を迎えた鈴木美重子理事の代わりに、浅田真弓理事を新たに選出した。来年3月18日に開催される社員総会の承認を経て、正式に新体制が発足する。
新体制とはいっても、すでに新理事の互選で新会長候補として小林の留任がほぼ決まっており、これまでの政策を踏襲していくことは明らかだ。
小林体制では各大会の放映権を自分たちで持つことを主張。テレビ局を中心に主催者側との交渉が難航していた。選挙2日前に発表された2019年のツアー日程までに3試合との交渉がうまくいかず「開催中止」と発表されている。しかし「中止とは一言もいっていない」という大会側からの声も一部で出ており、今後の展開が注目されている。
【写真】LPGAアワードは華やかに開催されたが…
そんな中、選挙前日のLPGAアワード終了後には、プレーヤーズ委員会委員長の比嘉真美子と熊本出身の有村智恵が、協会に対する不信感を口にしている。自分たちに知らされないまま、様々なことが進んでいたこと。それについて尋ねても「選手はいいプレーをして皆さんに笑顔を届けること」といわれただけで終わってしまったことなどを告白。不信感をあらわにした。「(協会が)私たちのことを考えてやってくれているのはわかるし、話し合えば分かり合えることもある。もっとコミュニケーションをとっていきたい」と、事を荒立てるというよりは困惑をのぞかせた。
何度も書いてきたことだが、LPGAが自分たちでツアーの各試合を主催し、放映権を持ち、ネット中継の配信を行うなどして財政基盤を確立させることは、正しい改革の方向性だというのが筆者の意見だ。放映権問題が発覚する以前から、一見、順調に見える人気のツアーも、このまま成り行き任せでは10年どころか5年先も危うい、という実感を抱いていた。なぜなら、皮肉にも放映権問題で周知のこととなったように、広告代理店や運営会社、テレビ局などの外部に様々なことを丸投げし、自分たちのビジョンがなかったからだ。さらに、ゴルフ界の団体としては唯一、いまだに理事を女子プロたちだけで固めているようでは、社会性も実行力も不足するのは当たり前。さまざまな専門家を理事に入れ、さらに実際を担当する実行部隊を充実させる根本的な組織改革が必要なことは、誰の目にも明らかだった。
苦しい状態の時に改革しても、さらに自分たちを追い込んでしまうことは1999年に日本プロゴルフ協会(PGA)から独立した日本ゴルフツアー機構(JGTO)を見ても明らかだ。それを考えれば、LPGAが改革を行うのに、このタイミングは絶妙だといっていい。
問題なのは、根本的な部分に手を付けないまま、放映権という部分だけを切り取って手を付けたことと、説明責任を果たしていないことの2つだけだ。
今回の件を取材しているうちに、とある関係者がこんな言葉を口にした。「周囲にもっと相談してくれればいいのに。関係者は全部敵に見えたのかもしれませんが」。確かに、放映権問題でのステークホルダーであるテレビ局や、その周辺の関係者が“敵”に見えたのは無理もない。だが、強硬策の裏にも最低限のコミュニケーションは必要だ。
特に問題なのは、LPGA会員である選手たちにまで不信感を抱かせてしまったことだ。18日の日程発表の席で放映権に対するスタンスや交渉に着手した経緯、今後の方針などを初めて説明した小林会長。会員たちに対してもそれまでまったくそのことを知らせずに来た。「なぜ、どうしてなのか。この後、経緯を含めて説明します」と、その際、口にした。外部から様々な情報を得て、協会側に何度も確認を求めた会員たちは、この日のまで完全に蚊帳の外に置かれていたことになる。これに対して、比嘉、有村を筆頭にした選手たちが不満を持つのは当然だろう。
会員たちへの説明責任が全く果たされていないことに、選手たちは憤っている。日本女子プロゴルフ協会とは、一体、どんな団体なのか。オフィシャルウェブサイトには「女子プロゴルファーの資質の向上並びにゴルフの技術、ルール及びマナーの研究、指導を行うことにより、女子プロゴルフ界の健全な発展を図り、もって国民の心身の向上及び国際親善に寄与することを目的とする」とある。組織的には、選挙を経て選出された理事会が、会員たちに対して説明責任を持つのは当然だろう。
「言ってもわからないだろうから言わない。でも、あなたたちのためだから」と、何の説明もせずに勝手に物事を進めるのは、民主的とは到底いえない。
せっかく組織の改革に着手したのであれば、順序を間違えず、会員たちはもちろん、関係各所にも丁寧に説明しながら物事を進めて、きちんとした基盤を築き上げるべきだ。選手たちから不満が出ながらも、小林浩美は理事としてトップ当選を果たしている。これを免罪符とするのではなく、反省すべき点は反省し、会員たちの信頼を得ながら物事を進めていく必要がある。2019年は、第5期小林政権の真価が問われることになる。(文・小川淳子)
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