年々クラブ契約をフリーにする選手が増えている国内女子ツアー。2018年には賞金女王のアン・ソンジュ(韓国)をはじめ賞金ランキングトップ5のうち3人が契約フリーという状態に。19年も大山志保、笠りつ子ら実力者たちがフリーとなり、様々なメーカーのクラブが入った14本で戦っている。
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多種多様なクラブを選べるのは我々アマチュアも同じこと。つまり彼女たちのセッティングを見ることで、アマチュアが選ぶべきクラブが見えてくるのではないか。ということで契約フリーの選手の14本を徹底調査した。今回は復活を期すベテラン・藤田さいきのセッティングを紐解く。
【藤田さいき2019年開幕時のセッティング】
1W:キャロウェイ エピックフラッシュ スター ドライバー 9.5度
(Jean-Carlo Avant-Garde Croix/S)
3W:キャロウェイ エピックフラッシュ スター フェアウェイウッド 15度
3UT:PING G400 19度
4UT:PING G400 22度
5I〜PW:Jean-Baptiste JB502CBI
SW:Jean-Baptiste JB702TW 51度
SW:Jean-Baptiste JB702TW 57度
PT:Jean-Baptiste JB502P
BALL:Volvik S4
国内女子メジャー「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」を含むツアー通算5勝を誇る藤田は、16年よりクラブ契約をフリーに。17年の12月には『ジャン・バティスト』を展開するニシザワの五十嵐隆昌氏とクラブフィッターとしての専属契約を結んだ。今季からはVolvikとボール契約。昨年22位だったドライビングディスタンスが、2試合を終えて10位と飛躍的に飛距離が伸びている。
そんな藤田の19年開幕時のセッティングを、プロコーチ&クラブフィッターの筒康博氏はこう見ている。
彼女は僕の中で今年の注目選手の一人です。復活するかどうかという分岐点には来ていると思います。まだまだ飛距離性能をはじめとするポテンシャルの高い大型選手であることは間違いないですから。
そんな藤田選手がここ数年で一番苦労したのは、スピン量のコントロールだったと思うんです。男子プロ並みにスピンを入れられる選手なので、日本の女子ツアーのコンパクションとグリーンスピードだとスピン量が余るんですよね。結果、自分の予定したところにボールを止められない。他の女子プロとは真逆ですよね。みんな落ちたボールが止まらないってなげいているんですから(笑)。
ただ、数字を見るにVolvikがそこを解決している可能性が高いです。男子プロに非常に近いので『あり余るパワーをロースピンで全部飛距離性能に変えてしまおう』と考えたと思います。ですが、彼女は飛ばすために全てをやっているわけじゃなくて、方向性と距離のコントロールをするためにボールを選んでいる。そう考えるとスピンを取った方がいい、となった。アプローチの仕方は真逆ですが、ボールのスピン性能からクラブを決めていく申ジエ選手的な選び方と言えます。ジエ選手の場合はV1ですけどね。
我々のカテゴリーでいうとスピン性能が決して高くないディスタンス系のボールを使っている以上、アプローチに関してはある程度スピンがかからないことを覚悟しているのかもしれないですが、結果としてショットでのいらないスピンが減る。スピンが減るっていうことは曲がりも減るんですから、ショットの精度は高まるはず。ということはパーオン率は高まるから、アプローチの回数は減って大きな問題にならないということになる。
藤田選手は力があってスピンが多いタイプですが、これはヘッドスピードが遅い人でも当てはまる可能性があります。ヘッドスピードが38m/sだと、普通は飛ばないですよね。当然ボール初速なんて出ない。だけど、その原因を探っていくとスピン量が多すぎるっていうことも多々あるんです。だから飛距離で悩んでいる人は、まずは自分のスピン量を見て欲しい。
飛ばないからって球が上がりやすいドライバーを買えば、飛距離が出るかというとそうとは限らないですから。そういった意味でこの『エピックフラッシュ スター ドライバー』というのは正解だと思います。初速性能が高い以上に無駄なスピンを取ってくれるという点で魅力的なクラブですからね。
逆にウェッジはもう少しスピンがかけられるモデルに替えていく可能性がありますね。例えばキャロウェイの『マックダディ』などでしょうか。ただ、ボールっていうギアは決まってクラブを作ってくれる人がいるという状況を見ても“チームさいき”の復活は近い、と見ていますよ。
解説・筒康博(つつ・やすひろ)/プロコーチ・フィッター・クラフトマンとして8万人以上のアドバイス経験を生かし、現在は最先端ギア研究所『PCMラボ』総合コーチ、インドアゴルフレンジKzヘッドティーチャーを務める。ALBA本誌ギア総研をはじめ様々なメディアでも活躍している。
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