<マスターズ 最終日◇14日◇オーガスタナショナルGC(米国ジョージア州)◇7475ヤード・パー72>
全盛期の圧倒的なオーラは影を潜めても、スーパースターの存在はやはり偉大だった。首位と2打差からスタートした最終日、タイガー・ウッズ(米国)は前半でバーディ先行も4番、5番と連続ボギー。それでも焦ることなく、ときがくるのを待った。
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「マスターズ」の本当の優勝争いはサンデーバックナインから始まるといわれる。前半を終えて首位のフランチェスコ・モリナリ(イタリア)と1打差。11番から始まるアーメンコーナーを前に、最低でもパーをセーブしたい10番でティショットを大きく曲げてボギー。11番もティショットを大きく右に曲げたが、幸いにもグリーン方向が空いた状態で、バーディ逃しのパーとした。
スコアだけを見れば、ウッズは「70」。60台をマークした選手が20人いた最終日を考えれば、決して最高のできとはいえない。ウッズもいくつかミスを重ねたが、それ以上に周りが自滅した。ウッズがフィールドに与える威圧感は、やはり相当なもの。間違いなく他選手の意識の中には、追ってくる虎の影がちらついた。
「6カ月前からここにピークをもってくるために取り組んできた」としたウッズ。『再びメジャーに勝つことができるのか』。周囲には懐疑的な意見もあるなかで、他の選手達はウッズの復活を肌で感じていた。
昨年の「全英オープン」では、最終日のバックナインに一時首位に立つも6位タイフィニッシュ。その時に優勝したのは今回、12番で首位から陥落するキッカケの池ポチャを喫した同組のモリナリだ。惜しくも1打足りなかったブルックス・ケプカ(米国)はウッズが2位に入った昨年の「全米プロ」を制しており、ウッズの追撃を受けていた。
昨年のメジャーで優勝争いをし、その後シーズン最終戦の「ツアー選手権」で5年ぶりの優勝。「あれが大きなステップだった。最高の選手たちのなかでも勝てることを確信した。大きな自信を得て、マインドも体もオーガスタにピークを持っていこうと決めた」と、この11年ぶりのメジャー制覇は、昨年からのプラン通りだったともいえる。
ウッズに憧れてゴルフを始め、最終日に同組となったトニー・フィナウ(米国)は、「今日のプレーを見る限り、彼は今後もこの場所にい続けると思う」と、世界最強のプレーぶりに舌を巻いた。初めてメジャーで逆転優勝を果たしたことも、ウッズの新たな強さを証明。ますます周囲を威圧する存在として、再・黄金期を築くことになるのか。
優勝してこその完全復活。期待、責任、ゴルフ界へのインパクト、求められるものすべてに対し、マスターズ優勝という形で応えた。昨年の夏から計算し尽くされたこの計画的な優勝で、今年のゴルフ界の合い言葉は“打倒ウッズ”になりそうだ。(文・高桑均)
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