<アジアパシフィック ダイヤモンドカップ 最終日◇12日◇総武カントリークラブ 総武コース(千葉県)◇7333ヤード・パー71>
「この瞬間が来ないかと思いました。ビックリしています。うれしいです。最高です。一生ぶんのプレゼントです」
最高のプレゼント!母に優勝カップを届けることができた【写真】
ツアー初優勝を逃げ切りで飾った浅地洋佑。会場には多くの応援団が駆けつけたが、その中にはもちろん、家族の姿もあった。母の伸子さんも、浅地の新妻と18ホールを観戦。「どこにいるのかわからなかった」と浅地がいうように、影から息子の晴れ舞台を見守った。
この日は母の日。前日、浅地が語った「恩返ししたい」という言葉を報道で知った伸子さんだったが、「本人がそんなことを語っているとは思わなかった」と驚いた。「男の子だから口にはしないけど、心では思ってくれていたんだなと思って」。
女手ひとつで育てられた浅地。小学校4年からは練習場の隣に引っ越し、「ランドセルを置いて自分で練習に行っていましたし、そこで知り合いもできていました」と、仕事に出かけている母に面倒をかけずに腕を磨いた。試合などは、「私が行けない時は近所の人がおくってくれたりもしてくれて」と、東京都杉並区のプロゴルファー誕生を、みなで支えてきた秘話も明かされた。
「本当に皆さんのおかげです」と喜ぶ伸子さんだが、思うようにいかない息子のプロ生活の裏では、さまざまな思いが駆け巡った。「本人はもっとできると思っていたと思うんですけど、自分が好きで始めたことだから」と、ときには叱咤激励も送り、厳しく接してきた。「(私に)当たってきたこともありましたが、私も強いから(笑)」と、母らしく息子を見守った。
「やめたいと思ったことが何回もあった」と明かした浅地だが、母の考えはどうだったのか。「やめたければやめればいい。世の中いろんな仕事もあるし、ムリにやってもらわなくてもいいと思っていたけど、優しくは言えなかったですね」と、母らしく、息子を励ましつづけたという。
親の心、子知らず。母の本心を知らずに叱責を受けた浅地は当時の言葉をこう振り返る。「やめたいと話したら、『やめて、あんたに何ができるの』とめちゃくちゃ怒られた(笑)」。そんなやりとりを経て、苦節8年で初優勝。冒頭の母の言葉が出てくるのも当然だろう。
厳しかった母の前で、母の日に優勝。「恩返しができてよかった」とした孝行息子に目を細めた母。「去年から変わりました。結婚もしたし、人間的にも成長できたと思います」と、笑顔で息子の成長をかみしめた。「どうしようもない息子だったと思う」。照れ気味に話した浅地を見つめる母の温かいまなざし。5月12日の母の日は、ふたりの親子にとって、最高の日曜日になった。(文・高桑均)
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