2試合前の「ワールドレディス サロンパスカップ」を制した20歳の渋野日向子。どんな局面でもニコニコとラウンドを続ける姿は多くのファンに強い印象を残した。勝因について聞かれた時も、自ら「笑顔」を挙げるほど。「去年のステップ・アップ・ツアーで、イライラした時ほどスコアが悪くなっていたので」など笑顔でラウンドする理由を話しており、渋野のゴルフにとって、切っても切れない重要な要素であることがうかがえた。
原英莉花の秘策! “親指と人指し指”で口角グイッ【写真】
その大会を終え、先週の「ほけんの窓口レディース」が行われている福岡に向かうと、今度はギャラリー投票特別賞で「ベストスマイル賞」なるものが。“笑顔のバトンタッチ”でもあったかのような、絶妙な流れだった。そして2日目に「68」の好スコアで上がってきた原英莉花の口からは、優勝に向けて「最終日はカリカリせずに、笑顔で終わりたい」という言葉も。こんな流れもあってか、女子プロが考える笑顔でのラウンドについて、もう少し深掘りしてみようと思った。
とはいえ、「笑顔が出るのってどんな時?」というのは、ちょっと漠然とし過ぎ…。そこで原には「笑顔が出なくなる時ってどんな時?」という質問を投げてみた。すると、即座に返ってきたのが、「気持ちが強くなった時!」という答え。もう少し細かく聞いてみた。
「ショットなどで、アバウトに広く狙いを定めている時は、ミスが出てもそれなりに冷静です。でも“ここでバーディが欲しい”という時は、どうしてもピンポイントに『ここに打ちたい!』、『こういう球を打ちたい』と思ってしまいます。そこで思い通りに打てなかったり、不運だなと思うことが起きると、気落ちしてしまいますね。スコアがよくても、悪くてもそれは一緒ですね」
もちろん“ボギーが続いているから”という状況で気落ちするのは当然のことだが、原が気になるのはスコアの推移というよりも、プレーの内容だという。さらに、これを取り戻そうと“攻めっ気”が強くなることが、笑顔が消えるフラグになるようだ。
「同じボギーでも状況が変わると、その後の精神状態は全く変わってきます。好きなホール、好きな距離、ミスしにくい状況でのボギーは、やっぱり響きますね。あとパットでいうと、私はショートするのが嫌い。打ち切れなかったり、ミスヒットをすると、『自分を信じてできない』ことに対してイラッとしてしまいます」
そんな経験を踏まえ、原には今ある秘策があるという。それが、親指と人指し指でV字を作り、それで口角を上げて “無理やりに”笑顔を作ること。「最近覚えたんです(笑)」というこの方法は、「心から『仕方ない』って思えないと、意味はないと思うんですけど、でも今は、『これをやったら仕方ないと思うようにしよう』という仕草にしているんです」と、自らにいい聞かすのに手軽で、かつ有効なようだ。
取材の際、「笑顔で回りたい」という言葉を頻繁に口にする勝みなみにも聞いてみた。笑顔のラウンドを意識するようになったのは昨年のこと。予選落ちが続くなど、急激に調子を落とした夏場以降の話だという。「この時は、本当に笑えなくてゴルフも面白くなかった。それに気づいて『どんな時も笑おう』と思い始めたら、調子が上がってきて。(予選落ちした)伊藤園レディスは本当にゴルフが楽しくて。そしたら次(大王製紙エリエールレディス)で優勝したんです!」。
イライラする気持ちが、プレーの判断を狂わせることも「あると思います」という。「笑顔でラウンドを続けるのは難しいこと。まだしっかりできているわけではないし、それを意識することが大事だと思っています」。あえて言葉にして、自分に強くいい聞かせている。
一方でこんな考えも。日頃から「ガッツポーズをするのが恥ずかしい」といっている小祝さくらは、常にクールなラウンドを意識する一人。その理由について聞いてみると、「もちろん(ラウンド中に)笑いながら話をすることはあるんですけど、プレーで笑うことはあまりないです。バーディを獲ったら『油断しないように。もっと集中しないと』と考えるようにしています」。おっとりしている小祝でもプレー中にイライラすることはあるようだが、「もともと人より感情の起伏が少ないのもあると思いますが、私のイライラのマックスは“ため息”です。『あ〜あ』っていっているときはイライラしている時です」と、やはりのんびりとした口調で教えてくれた。
ちなみに、冒頭に出たベストスマイル賞で今年6連覇を達成したイ・ボミ(韓国)は、意外にも(?)ラウンド中の笑顔は「あまり意識していない」ということだった。「悔しい時は表情に出てしまうし、最近は笑顔が少ないかもしれませんね…」と苦笑い。苦戦が続いていることもあり、ちょっと“悲しい答え”が返ってきた。
笑うことで、免疫力の向上や、病気予防、リラックス効果があるとはよくいわれることだが、人によってはゴルフのスコアがよくなる効果も? 成績によっては笑顔をキープするのは至難の技だが、そのなかでしっかりとメンタルコントロールをしようとする女子プロたちの姿を見ることができた。(文・間宮輝憲)
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