女子アマチュア最高峰の試合で起こった悲しい出来事は、ツアー関係者にとっては他山の石とするべきものである。
破損したクラブはこんな感じ【写真】
すでに当サイトを始め、あちこちで報じられているクラブ破損事件だ。被害に遭ったのは古江彩佳。3日目首位の和久井麻由を3打差で追い、最終組で優勝争いを繰り広げていた最中、バックナインに入ったばかりの10番でのことだった。古江のバッグが積まれたカートを、日本ゴルフ協会(JGA)の山中博史専務理事が運転し、竹田恒正会長が同乗したカートが追い越した際、古江のクラブに接触。3Wを追ってしまったのだ。
大会主催者の要職にある者が熱戦に水を差し、選手の足を引っ張る最悪の事態。後から山中専務理事は、当日の謝罪に加え、翌日にはホームページで「懺悔の気持ちでいっぱいです」、「謝って解決する問題ではない」と、改めて謝罪。理事会で報告して適切な対処をすることも付け加えた。JGAとしては、1日遅れてホームページで謝罪。「事故の詳細調査と再発防止策、およびカートを運転していた山中博史専務理事の処分について協議し、その結果についてはホームページ上で発表させていただきます」とした。
あるまじきことをやってしまったのはいうまでもないが、さらに気になることがいくつかある。(1)に事実関係の不思議。(2)は、現場にいたJGA竹田会長がなぜ表に出てこないのか、ということだ。
(1)は本当に疑問がそもそも、さほど広くない日本のゴルフ場で、1台のカートを別なカートで追い越そうとするときには、できる限りスピードを落とし、ぶつからないように注意するのが当たり前だ。それなのに、クラブに当たり、破損したにもかかわらず気づかずに行ってしまい“被害者”に指摘されて初めて気づき、謝罪したという事態そのものが、普通なら起こりえない。なぜ、こんなことが起きたのか。
(2)については、前面に出てこないのは責任者としての当事者意識がかけらもないとしか思えないまがりなりにも「我が国のゴルフ界を代表する団体」(JGAホームページより)を標ぼうする組織。会長がそれを代表するのはいうまでもない。しかも、現場で“加害者側”のカートに乗っていたにもかかわらず、公式に何のコメントもしない。事件2日後にJGAが出したコメントも「日本ゴルフ協会」とあるだけで、誰の名前もない。会長名で出すのが当然ではないのか。カートを運転していた山中専務理事だけの責任ではなく、組織としての問題なのに、山中専務理事だけが処分されるような文面がつづられている。そもそも、文面だけではなく会見くらい開いて説明すべき事項でもある。
今後、この事件に対してJGAがどう対処していくのかを見届け、評価するのはもちろんだが、カート使用の方法から謝罪の仕方、組織としてどう責任を取るべきか、そのスピードなど、他の競技団体が学ぶべきことは多いはずだ。
これほどひどい事件がまた起こることは考えられない(考えたくない)が、トラブルは起きるものだという点では他人事ではない。JGAの動きを他山の石、つまり反面教師としてしっかり見つめ、それぞれが考える必要がある。(文・小川淳子)
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