<全英オープン 3日目◇20日◇ロイヤルポートラッシュGC(北アイルランド)◇7344ヤード・パー71>
ロイヤルポートラッシュGCのヘッドプロ、ガリー・マクニールはこれまで幾度となく、世界のトップゴルファーたちが18番の花道を歩く姿を見てきた。しかし、自身がそのような体験をできるとは、夢にも思っていなかった。
マキロイも左OBに入れた 1番ホールはティショットがカギを握る【写真】
だが、68年ぶりに北アイルランドの地に戻ってきた今大会、第148回「全英オープン」の決勝ラウンドで、その「まさか」が現実ものとなった。
20年にわたり自身のホームコースとなってきた同GCで、決勝進出者の人数の関係上、一人でのラウンドとなったポール・ウォーリン(イングランド)のマーカーとして、ギャラリーの大観衆の中でマクニールは至福の時間を過ごしたのである。
超満員のグランドスタンド、そして世界中のゴルフファンがテレビ中継を観戦している。そんな中で、マクニールの放った1番ティショットは左ラフに入っていった。しかし本人は驚くほどに心を落ち着かせてプレーができていた。コースの左右、マクニールの進む道には、数多くのなじみの顔が並んだ。クラブメンバーたちが“晴れの舞台”でコースを歩くヘッドプロの応援に駆けつけていたからだ。
「1番のティグラウンドでも落ち着いていた。でもバッグからクラブを抜いた瞬間から、悪いショットになると分かっていたけどね(笑)。でも多くのメンバーもいたし、家族や友人も見に来てくれていた。うれしかったよ。17番では良いパットも決めて、気持ち良かった」(マクニール)
ゴルフファンとして何度も全英オープン会場に足を運んできたマクニールはラウンド後、「信じられない経験だった」と笑顔で語った。
「本当にクレージーな出来事だった。当然、クラブのヘッドプロとして頭の中では長い間考えていたことではあったけど、実際に電話を受けたときは『すごいことになった』と思ったよ」
緊張のあまり眠れなかったのではないかと思われたが、「昨晩はよく眠れた。きょうのゴルフ自体も悪くなかった。パットも良かったし、ティショットも良かった。スコアはおそらく79か80くらい。本当に楽しかったよ!」と明かした。
マクニールが世界最古のメジャー大会と恋に落ちたのは1982年のこと。トム・ワトソン(米国)がチャンピオン・ゴルファー・オブ・ザ・イヤーに輝いた年だった。以来、ゴルフにのめりこんでいった少年は、世界有数のゴルフコースでヘッドプロを務める立派な成人男性に成長。こうして思いがけずに、夢の舞台へ上がることになったのである。
人生では何が起こるか分からない。ホールアウト後のマクニールは「すぐにでも横になりたい!」と疲れた表情とは裏腹に、少年のように目を輝かせいた。
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