<三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日◇17日◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262ヤード・パー70>
東北福祉大ゴルフ部・阿部靖彦監督は、同大ゴルフ部の3年生・金谷拓実が優勝した直後、次のように語った。
金谷拓実がグリーンで吠えた!!!【写真】
「おめでとう! ナイスプレーでした。最後のパットに気持ちが表れていましたね」
最終18番グリーン、約7メートルのイーグルパット。これが入れば優勝という場面で、金谷は見事にスライスラインを読み切りカップイン。監督は18番グリーンサイドで同大の米澤蓮、親交の深い日本体育大学の中島啓太らとともに金谷のウィニングパットを見守っていたが、金谷の「これを入れてやる!という感じがひしひしと伝わってきたという。
実は、今週の練習日からずっと「最近調子が悪い。自信もない」と口にしていた金谷は、初日も3オーバー発進だった。ここのところ、「アジア・パシフィックアマチュア選手権」では2連覇ならず、「日本オープン」では予選通過は果たしたものの40位タイ、学生の団体戦「信夫杯争奪日本大学ゴルフ対抗戦」(2日間競技)では、不調のため2日目、メンバーから外されるという屈辱も受けており、フラストレーションの溜まる日々が続いていた。しかし、2日目に6バーディ・1ダブルボギーの「66」をマークしてからというもの、世界アマチュアランク王者は自分らしいプレーを取り戻し、3日目に「63、最終日に「65」の好スコアを叩き出した。
「今日の朝は優勝するしかないって言って送り出しました。アマチュアだった松山にも過去、出る試合には優勝しろと言ってきましたけど、金谷に対しても同じ言葉をかけました。優勝を目指して2位とか、トップ20に入るということはありますが、最初から予選通過が目標なんてダメ。松山もそれは後輩に伝えてきたし、金谷も同様に後輩に伝えています」
よく「今週の目標は何ですか?」と選手に質問することがあるが、松山英樹にはこの質問は一切しない。なぜなら、彼は常に「優勝を目指して出場している」ことがわかりきっているからだ。そして今週、アマチュアの金谷もまた松山と同様、「優勝が目標。調子はいいとは言えないが、自分のベストを尽くせば結果がついてくる」と語っていた。プロもアマチュアも同じ土俵に上がったら、「優勝」の2文字のために戦うだけ。そこにはプロもアマも関係ないというのが東北福祉大ゴルフ部イズムだ。アマチュアも最初から「優勝」を目指しているのだから、へんな遠慮や戸惑いを感じることもない。非常にシンプルな考え方である。そしてこの教えは、監督から学生たちに、先輩から後輩に脈々と受け継がれている。松山も金谷に対して、“世界で戦うために何が必要か?”を今年の海外遠征中に教えているのだという。
来年、金谷は大学ゴルフ部のキャプテンに就任する。かつてこの大会で優勝した松山が、金谷に教えたように、金谷もまた後輩たちに指導していく。こうして受け継がれた教えが、国内最強のゴルフ部を作り、世界で通用するゴルファーを作っていく。(文・大泉英子)
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