日本の女子ツアーに、『メルセデスランキング』というものがあるのをご存じだろうか? 知っている方はかなりの通かもしれない。それほど、これまで目立たないものだった。脚光を浴びるのは年に1度、LPGAアワードのパーティーの席だけと言っても過言ではない。ランキング1位=LPGAメルセデスアワード(最優秀選手賞)に輝いた者が表彰され、賞品であるベンツの前で記念撮影をする時だ。
2012年に導入されたこの制度は、LPGAオフィシャルパートナーでもあるメルセデスベンツ日本がスポンサーだ。同ランキングだけでなく、ジュニア育成活動などもサポートしている。
ポイント制度は、成績ポイントと出場ラウンド数を足したもので構成されている。大まかに説明すると、1位=30ポイントから20位=1ポイントまでの成績ポイントが基本で、公式戦ではこれが2倍、それ以外の4日間競技では1・5倍となる。さらに、1ラウンドプレーするごとに1ポイントが加算される仕組みとなっている。複雑に見えるポイント制度だが、改めて読んでみると、極めて公平に成績のみが反映されていることがよくわかる。
賞金ランキングと比較してみよう。賞金は、プロゴルファーと切っても切り離せない大切なもの。その一方で、大会によって賞金額が大きく違うのもまた事実だ。賞金の大きな試合で優勝したり上位に入ったりすれば、当然獲得賞金は増え、ランキングは上がる。
シーズン大詰めになって鈴木愛が3週連続優勝をやってのけ、さらに渋野日向子が優勝したことで、賞金女王争いは白熱している。ランキング1位の鈴木、2位の申ジエ、3位の渋野の3人の戦いぶりをファンは見守っている。賞金女王になれば、3年間のシード権もついてくる。
一方、メルセデスランキングはどうだろう。1位は渋野の511.5ポイント、2位はジエ(506.0ポイント)で3位はイ・ミニョン(457.5ポイント)。故障で試合数の少ない鈴木は、451.5ポイントで5位にとどまっている。実は、メルセデスランキング1位の者にも、3年シードがあるのだが、こちらも今一つ知られていない。
日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長は以前、メルセデスランキングの比重をより大きくする方向性を示していた。1位での3年シードはその第一歩だろうし、翌年のシード権に反映されると言う話も出始めている。
世界的にも、かつては賞金がすべてだったプロゴルフの世界でも、ポイント重視の傾向になってきているのは明らかだ。最も大きいのが世界ランキング(女子はロレックスランキング)で、メジャーの出場権などに反映されて久しい。また、日本の男子ツアーも、女子とは違う形式だが、今年からメルセデスベンツ・トータルポイントランキングを導入している。
鈴木、ジエ、渋野の活躍により、にわかに賞金ランキングとの違いが浮上してきたメルセデスランキング。せっかく作っているのだから、もっと大きな意味を持つようにした方がいいのはいうまでもない。賞金の多寡に左右されずに、公平に成績を評価するものとして選手の励みになるし、ファンの楽しみが増すというものだ。(文・小川淳子)
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