<プレジデンツカップ 最終日◇15日◇ロイヤル・メルボルンGC(オーストラリア)◇7055ヤード・パー71>
選手が到着する前のグリーン。観客が選手の到着を待つ中で、必ずといっていいほど先に姿を見せたのはキャプテンのアーニー・エルス(南アフリカ)だった。
コアラの応援むなしく…【大会フォト】
今年の両チームのキャプテンはタイガー・ウッズ(米国)とエルス。どちらも選手として何度も大会に出場しているが、キャプテンとして臨むのは初めてだった。そんな2人のリーダーシップは対照的。選手としても最前線で選手を引っ張るウッズと、後ろに回ってそっと背中を押すのがエルス。
まだ選手が到着する前のグリーンにカートでさっそうと登場し、状況を確認するとファンの声援に応えて笑顔を振りまいてティイングエリアに戻っていく。そうやって会場の雰囲気を温めたあと、ミスショットをした選手がいれば、セカンド地点に歩く途中ですかさず声をかける。エルスと話した後の選手は、ほとんどが笑顔をのぞかせていた。
そんな新キャプテンのもとで、いかんなくチームワークを発揮した世界選抜。ダブルス戦の3日間を終えて米国選抜に2ポイントリード。10大会ぶりの世界選抜優勝という快挙を圏内に捉えたが、シングルス戦では2勝6敗4分けで逆転を許し、トータルポイント14対16で敗北。その手にカップを掲げることはかなわなかった。
最終日の敗戦。表彰式が行われた16番グリーンでは、米国選抜が喜ぶ様子を世界選抜のメンバーが静かに見守っていた。“敗北”の2文字が浮かぶ空気を払拭するかのように、エルスは観客に向けてキャップを振り、「チームの皆は本当に素晴らしかった。ベテランの選手も初出場の選手もたくさんいたが、全員100%の力を出し切った。みんな、本当にありがとう」と笑顔でスピーチに臨んだ。
「米国選抜の選手だって、本当はみな友達だ」。表彰式のあいだ中、笑顔を絶やさない姿に、会場中、米国選手から拍手が贈られる。「1つの傘の下で一丸となることができた。このメンバーで戦えたことを誇りに思う」。9カ国から集まった、年齢も経験もバラバラな12人をまとめたエルス。16番グリーンから去る米国選抜選手と握手を交わして表彰式を去る背中に、いつまでも大きな拍手が贈られた。(文・谷口愛純)
<ゴルフ情報ALBA.Net>