多くのドラマが生まれた2019年シーズンに活躍した選手たちに、一番“印象”に残っている1打を挙げてもらった。良かったものを挙げる選手、悪かったものを挙げる選手、性格やその年の活躍が如実に出るこの企画。今回は、今年の女子ゴルフ界…もとい日本ゴルフ界を象徴する21歳の“海外メジャーチャンプ”渋野日向子。
『今年のゴルフ界で1番のニュースは?』 そう聞かれたらほとんどの人が挙げるであろうできごとが、『渋野日向子の全英AIG女子オープン制覇』だろう。昨年プロテストに受かったばかりのルーキーは、QTからツアーに本格参戦し、まずは国内メジャーで初優勝を達成。さらに海外メジャータイトルまで獲り、ゴルフの枠を超え一躍国民的ヒロインにまでのぼりつめた。
その渋野が今年の一打としてどれを挙げるのか、期待しながら聞いていると、出てきたのは、あの“人生を変えた”全英でのウィニングパット……ではなく、本人がずっと悔やみ続けたという一打だった。
それは全英を制覇し帰国後2試合目となった「NEC軽井沢72ゴルフ」にあった。トップと1打差の2位タイで2日目を終え、“凱旋勝利”目前という状況で最終日を迎えた渋野は、パー4の18番グリーンに立った時、すでにプレーを終えていた穴井詩、イ・ミニョン(韓国)に並ぶトップだった。
ここでのセカンドショットはピンから5mの位置に着弾。続くバーディパットは、当然ながら“決めれば優勝、外せばプレーオフ”という大事な一打になった。しかしこの局面で異変が。アドレスに入った時に、「手が震える」という現象が起きた。
結果、このバーディパットはカップからそれて2mオーバー。さらに続く返しのパーパットもまさかのカップインならず。悪くとも2パットでおさめたい距離から、痛恨の3パット。これで3位タイに転落し、優勝がついえた。「プレーオフにすら行けず、あれは一番悔しかった」。優勝争いの張り詰めた場面は、一瞬にして呆然の時間に変わってしまった。
この大会を終えた後も「悔しくて、いつまでも言っています(笑)。『あの軽井沢の18番』っていうのは、もはや自虐ネタですね」と、何度も悔しさを口にしたというこのパットは、「本当に、もう少し何とかなったよなって…今でも思います」と深く記憶に刻み込まれるものになった。今年のスポーツ界の一つの名シーンとなった、あの全英制覇を決めた6mの“壁ドンパット”をもしのぐ衝撃を、渋野は軽井沢の地で味わっていた。
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