紆余曲折のすえに自身2度目となる賞金女王に輝いた鈴木愛だが、ゴルフに対して真面目で素直な一面があり、時に発した言葉が周囲に勘違いされることもある。
渋野日向子、申ジエ(韓国)と女王争いを繰り広げていた最終戦「LPGAチャンピオンシップリコーカップ」の初日のホールアウト後の発言もニュースになった。
15番(パー4)でのティショットが右からの風に流されてしまい、第2打でグリーンを狙えなかったことをキャディのせいにしてしまったのだ。
「右からの風だったのに、(キャディさんに)左からって言われ、左に打ち出したら流されました。私のミスじゃないだけに腹が立ったし、その分取り戻してくださいって感じです」と言っていたが、現場では少し冗談ぽく話していた。ただ、文字になると少しきつく聞こえる。そこが怖い所で、鈴木も「後付けにはなりますが、発言については気を付けないといけない」と反省していた。
個人的には鈴木の立場でしか、その時の感情や状況はわからない部分もあると思う。それを踏まえたうえで、改めてそのことについて正直に話してくれた。
「去年、今年とずっと私のエースキャディとしてお願いをしている方なので、ものすごく信頼しています。だからこそ、私の中で風を読み違えることはないだろうっていう思い込みはありました。間違えることはないだろうとどこかで信じていたのはあります。ただ、間違えることはあっても、そこから自分で流れを引き戻せられなかった。緊迫した賞金女王争いをする中でしたので、多少、イライラすることもありました」
その後、日本ツアーで3度の賞金女王となっているアン・ソンジュにもこう言われたという。
「あそこ(ティグラウンド)に立った人にしか分からないプレッシャーがあるから、気にしなくていいよって。追いかけるより、追いかけられるほうがプレッシャーになるからって。そのあたりをみんなに少し想像したり、感じてもらえたら……」
こうしたこともすべて経験だ。誰にでも失敗はあるし、教訓にして次に生かせばいいだろう。
それに後ろばかり振り返っていられない。鈴木には明確な目標がある。来年の東京五輪出場だ。
「日本では結果を残せていますが、アメリカではマネジメント力やグリーンのラインの読みなどが難しくて、まだまだ課題が多い。そういうのを克服して結果を残したい。来年はとにかく米ツアーメジャー、特にANAインスピレーションと全米女子オープンではトップ10とか優勝争いができればいいなと思っています」
海外メジャーで結果を残せば、世界ランキングも上がり、おのずと五輪出場も見えてくるだろう。
現在、世界ランキングでは6位の畑岡奈紗、11位の渋野日向子に次いで、15位の鈴木は3番手。6月29日付けのオリンピックランキングで15位以内に入れば、3人の出場が可能だ。鈴木はとにかく「他を意識するよりも自分が15位以内に入ることを意識していきたい」と話す。
最後に黄金世代をどう見ているのかについて聞くと、「黄金世代ですか? うーん、正直あまり意識はしていないんですけれどね」と言う。その表情は少し強がっているようにも見えた。
少し考えて「負けられないというか、“まだ負けない”って思っています」。鈴木が続ける。
「私も練習はたくさんやってきましたし、優勝の経験もしてきている。一方で結果が出ない試合も山ほど経験してきています。負けることも経験ですし、負けることで今後への課題も見えてきます。若い選手よりもたくさん経験しているので、総合的に見ても『まだ負けない』って思っています」
そうキッパリと言い切る鈴木には女王のプライドが漂っていた。来年も黄金世代が話題になるだろうが、鈴木の存在感もさらに増しそうな気配もある。自身3度目の賞金女王も決して不可能ではないはずだ。
文 キム・ミョンウ
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